唯一無二のTVを徹底レビュー
東芝REGZA「55X3」の衝撃 ー やはり「4K」は凄かった
唯一無二の4Kテレビ55X3 その全貌を読み解く
取材・執筆:林正儀
レグザの最上位モデルに位置づけられるXシリーズが、昨年また歴史を塗り替えた。それが世界初の4Kテレビ「55X3」だ。ここでは、改めて55X3の特徴を見ていこう。
55X3は現行モデルで最強の仕様を備える
昨年12月10日、液晶テレビ・レグザの最上位モデル55X3が世界に先駆けて発売された。CEATEC JAPANでのデビューから約2ヵ月。史上初めて、4K解像度を持った民生用のテレビが満を持して投入されたわけだ。
55X3は、フルHDパネル4枚分の画素をもつQFHD(クアッドフルHD)パネルと、画像エンジンに「レグザエンジンCEVO Duo」を搭載する、まさに現行機種における最強の仕様を備える。加えて、前面のレンチキュラーシートにより裸眼3D表示も実現している。果たしてどのような映像世界に誘ってくれるのか興味深々だが、次世代の規範となる超高精細画質という側面だけでなく、音質や機能面でも意欲的なチャレンジがみられる。
4K化には最大5つの超解像処理を経由する
まずは55X3の画質面を見ていこう。4K×2K、すなわち総画素数829万(3840×2160)のQFHDパネル(VA液晶)は55V型のテレビサイズにおいて、圧倒的なハイレゾ映像を可能とする。バックライトは240分割の直下型LEDで、5000対1の高コントラストと緻密なグラデーション、動画応答性を確保している。
基幹となる映像処理技術は、東芝のお家芸ともいえる超解像だ。歴代のレグザシリーズでも他社に先行して超解像をアピールしてきたが、超解像技術は来るべき4K時代を見据えたものでもあった。55X3では、DVDなどのSDコンテンツに限らず、HDコンテンツでもアップスケーリング+超解像によりリアル4Kに迫る映像クオリティを実現する。4Kのネイティブコンテンツが無い現状では、超解像技術は欠かせないのだ。
東芝が行っている超解像の手法は、リアルタイムで信号解析を行って最適な映像をつくりだす「再構成型」と呼ばれるものだが、4K化の処理プロセスは2段構えとなっている。1度目の超解像処理では、DVDや地デジ素材などをフルHD解像度に整える。そして2度目の超解像処理でフルHDから4K2Kに拡大する。これらの処理には、再構成型超解像、自己合同性型超解像、3次元フレーム超解像、色超解像、さらに新しくカラーテクスチャー復元超解像(圧縮映像から元画像の4:4:4を復元する)を加えた、合計5種類もの超解像技術(QFHD超解像技術)が使われている。
こうした入念な超解像技術やバックライト制御、さらにはグラスレス3D映像の処理を一手に引き受けているのが「レグザエンジンCEVO Duo」である(旧レグザエンジン比で約6.8倍もの高速演算処理性能)。Duoの名前の通り、CEVO(Cell Evolution)のメインLSIを2基搭載しており、CELLレグザ55X1/55X2ではソフトウェア処理されていた各種機能がこのCEVO Duoによるハードウェア処理に切り替えられている。
画質以外でも、USBハードディスク対応した長時間録画機能や多彩なエンターテインメント関連機能など、新エンジンの役割は膨大である。DTCP-IP対応のコンテンツサーバー機能を有し、USBハードディスクに録画した番組は「レグザタブレット」や別の部屋にあるレグザなどと組み合わせて視聴できる「レグザリンク・シェア」機能も備える。
9視差の映像を作り出し、裸眼での3D視聴を実現
55X3のメインフィーチャーは4Kだが、裸眼で3Dが楽しめるグラスレス3D機能も読者の気になるところだろう。何と言っても、55型という巨大クラスでの裸眼3Dテレビは未だかつてこの世に存在したことはないのだ。
3Dの表示にはインテグラルイメージング(光線再生)方式を採用し、ディスプレイ前面に貼られたかまぼこ型のレンチキュラーシートを通して、9つの視点に映像を生成。左右の目にアングルの異なる映像を見せることで、視聴者の脳内で3D映像を作り出す。
ポイントは4Kパネルとの間に設けられた偏光切り替えシートによって、3DのON/OFFを可能にしたことだ。リアルタイムで生成された9視差の3D表示を観るのか。それとも偏光シートをスルーにして4K解像度の2D映像を楽しむかが選択できる。但し、グラスレス3D時の解像度は1280×720に落ちる。
9方向へむけて像を結ぶこの方式では、スイートスポットでの視聴が必須だが、それにはフェイストラッキングという視聴位置の補助機能が設けられている。顔検出カメラによって視聴者の顔を検出して位置を認識。あとはリモコンのトラッキングボタンを押せば、それにあわせて3Dの視聴エリアをテレビが調整してくれる。
3Dについては、もちろん精度の高い2D/3Dの変換機能(9視差3D映像生成技術)があり、地デジやBSデジタル、通常のブルーレイソフトであってもグラスレス3D映像として楽しめる。また3Dソフトの場合にはフレームシーケンシャル方式はもちろん、サイド・バイ・サイド放送であっても奥行を推定して裸眼3D化が可能だ。
画面の四隅にSPを配置し画面中央で音を定位させる
音質へのこだわりも見逃せない。薄型ながら画面の四隅にスピーカーを配置してセリフを画面中央に定位させる工夫(センターフォーカススピーカー)や、そのユニットにもオーディオで使われる竹繊維と特殊樹脂による平面振動板や強力なネオジウムマグネットを採用し、中高音域のクリアネスを高めている。と同時に、背面には8cmの大口径ウーファーを搭載し、それぞれを合計出力30Wのマルチアンプで駆動させる。DSPのCONEQも引き続き採用しており、テレビのスピーカーとしては異例のクオリティ志向だ。55X3はまさに、直視型4Kモデルの到来を告げる大注目のモデルなのである。
<SPECIFICATION>
55X3 ¥OPEN(予想実売価格90万円前後)
デジタルチューナー | 地上×3 / BS・CS110度×2 | ||
パネル | サイズ/タイプ | 55型 / VAタイプ | |
画素数 | 3840×2160 | ||
駆動 | 120Hz | ||
表面処理 | グレア(レンチキュラーシートあり) | ||
光源 | 白色LED | ||
光源構造(分割数) | 直下配置(240分割) | ||
コントラスト | 5000対1 | ||
ダイナミックコントラスト | 650万対1 | ||
視野角 | 上下左右178度 | ||
3D | 方式 | 裸眼 インテグラルイメージング方式(9視差) | |
視聴時の画素数 | 1280×720 | ||
映像処理回路 | レグザエンジン CEVO Duo | ||
スピーカー | フルレンジ×4(2×10cm)、サブウーファー×1(Φ8cm) | ||
音声出力 | ステレオLR(10W+10W)、SW(10W) | ||
主な入出力端子 | 映像入力 | D端子 | 1(D5) |
S端子 | ー | ||
コンポジット | 2 | ||
音声出力 | 光デジタル | 1 | |
ヘッドフォン | 1 | ||
その他 | HDMI | 4 | |
USB | 2(汎用、ハブ対応録画専用) | ||
LAN | 1 | ||
SDメモリーカードスロット | 1(SDXC対応) | ||
内蔵HDD | ー | ||
主な機能 | 超解像 | ○(QFHD超解像技術) | |
倍速 | 120Hz駆動(アクティブスキャン240) | ||
バックライトスキャン | ○(12分割) | ||
コマ補間 | ○(60→120) | ||
自動画質調整 | ○ | ||
レグザコンビネーション高画質 | ○ | ||
60i-30p変換プログレッシブ処理 | ○ | ||
ゲームモード(遅延時間) | ○(約1.7フレーム=約28.3msec) | ||
アニメモード | ○ | ||
写真再生 | ○(JPEG準拠、8000×8000ピクセル以内、24MB以内) | ||
ネット動画 | YouTube | ○ | |
テレビ版Yahoo! JAPAN | ○ | ||
アクトビラ ビデオ | ○(フル対応) | ||
ひかりTV | ○ | ||
TSUTAYA TV | ○ | ||
T's TV | ○ | ||
DLNA | サーバー(DMS) | ○(レングリンク・シェア) | |
クライアント(DMP) | ○(レングリンク・シェア) | ||
レンダラー(DMR) | ○(レングリンク・シェア) | ||
HDMI関連 | InstaPort | ○ | |
DeepColor/x.v.Color対応 | ○ / ー | ||
ARC対応 | ○ | ||
3D対応 | ○ | ||
4K対応 | ○ ※ | ||
録画関連 | USB HDD録画 | ○(同時接続最大4台、登録最大8台、最大2TB HDDまで認識) | |
AVC録画方式 | トランスコード方式 | ||
AVC録画モード | AF(約12Mbps)、AN(約8Mbps)、AS(約6Mbps) | ||
2番組同時録画 | ○ | ||
学習自動録画 | ー | ||
編集/オートチャプター | ○/○(2番組同時対応) | ||
メディアへのダビング | ○(レグザリンク・ダビング) | ||
ポータブル機器連携 | ー | ||
3D関連 | 2D/3D変換 | ○(モーション3D、ベースライン3D、フェイス3D、ステレオ3D) | |
自動画質調整 | ○(おまかせドンピシャ高画質3D) | ||
視聴位置調整 | ○(フェイストラッキング) | ||
音声 | DSP | CONEQ | |
リモコン | レグザリモコンll(赤外線) | ||
消費電力 | 410W | ||
年間消費電力 | 385kWH/年 | ||
外形寸法(付属スタンド含む) | 1271W×862H×357Dmm | ||
質量(付属スタンド含む) | 30.0kg |