唯一無二のTVを徹底レビュー
東芝REGZA「55X3」の衝撃 ー やはり「4K」は凄かった
55X1から55X3へ レグザXシリーズの軌跡
執筆:大橋伸太郎
レグザXシリーズの歴史は、PS3の頭脳と同じ「CELL」を搭載したCELLレグザ「55X1」に始まる。ここでは、最新モデル「55X3」まで至る歴代のレグザXシリーズを振り返る
全てはここから始まった 超弩級スペックを誇る55X1
記念すべきレグザXシリーズの第一世代機55X1は、2009年に開催されたCEATEC JAPANの前夜に発表、同年12月に発売されたモデルである。CELL(Cell Broadband Engineアーキテクチャー)を使ったテレビに関しては「ネットワーク機能を飛躍的に充実させるのでは?」といった様々な憶測があったが、意外やCELLレグザは、その能力の大半を画質の地道な向上に向けてきた。つまり、東芝はモンスターエンジンと呼ばれたCELLを使って「画質のいいテレビ」を創造したのである。
CELLはメタブレイン(当時のレグザシリーズに搭載されていた映像エンジン)の143倍の演算処理能力を誇る。55X1では、同社が民生で先鞭をつけた超解像を発展させた「CELLプラットフォーム超解像技術」を搭載し、映像のエッジ部と色の境界のキレを大幅に改善。さらにインターネット映像の圧縮ノイズを検出して分離・補正、アニメの輪郭ノイズを低減した。同時にメガLEDパネルを採用し、ローカルディミングの駆動領域を従来レグザの96分割から512分割(16×32区分)へ倍増、結果500万対1という空前のダイナミックコントラストを達成した。それまで民生機の最高値は100万対1であったから、55X1はテレビの画質のブレイクスルーを起こしたのである。当時視聴の定番だったBD『ノーカントリー』を観た時は、闇夜とヘッドライトの光芒の対比のダイナミックレンジに映像であることを忘れ現実の出来事を体験しているような恐怖さえ覚えた。
55X1を脳裏に焼き付けたもう一つの特徴が「タイムシフトマシン」だ。3TBのHDDを搭載し、2TB分を地上デジタル放送のタイムシフト用に、そして残りの1TB分を従来の録画テレビ同様の放送録画用に使う。14台のデジタルチューナーを搭載し、内8台が常時番組を2TBのHDDに蓄積する(最大8チャンネルで26時間分)というものだった。放送というソフトとハード(テレビ)が初めて一体になった瞬間だった。タイムシフトマシンはこの後、55X2、そして現在のレグザサーバーなどへ継承されていくことになる。
3Dでもローカルディミングと超解像を可能にした55X2
レグザXシリーズの第二世代機55X2は3D機能を搭載し、2010年10月にデビュー。サイド・バイ・サイドなど、垂直方向の解像度がフルHDに満たない3D方式の映像を表示する際に垂直画素の復元を行う「CELLレグザ3D超解像技術」が新たに搭載された。
超解像処理によりエッジが鮮明になることで、視聴者が脳内で融像する際の立体視の効果を向上させている。またCELLの演算機能を活かし、2Dからの高度な変換機能を搭載したことも注目に値する。ローカルディミングに関しては、3DメガLEDバックライトコントロールシステムを搭載。LEDの個数とピーク輝度数値は55X1と比較して若干合理化されたが、512分割は継承、ピーク輝度性能を活かした新制御技術でダイナミックコントラストの数値は900万対1と55X1のスペックを大きく更新、明るく力強い映像で3Dへの懐疑を吹き飛ばした。
55X1、55X2共にテレビの画質水準を飛躍的に高めた力作だったが、反面、回路技術が最早液晶パネルのポテンシャルを越えている感もあった。Xシリーズ用にチューンされているものの、通常のVA型フルHDパネルを使っていることは事実である。いわば、そのことへの回答が昨年発売の55X3なのではないだろうか。レグザXシリーズは、その時々のイノベーション技術をどこよりも早く投入し、尚かつ常に前世代機を上回る映像機器の大きな飛躍を約束する唯一のテレビシリーズと言えるだろう。
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