山之内 正が「LC-70X5」の画質を検証
巨大画面で「世界が変わる」 − 液晶テレビ最大の70インチ “AQUOS” を徹底視聴
65インチと比べて世界が異なると感じるのも当然で、このあたりからから上は、本来ならスクリーンとプロジェクターがカバーする領域で、普通に買える家庭用テレビでは事実上未体験の世界と言ってもいい。
絶対サイズがここまで大きいとシネスコや70mmの作品も画面が小さくならず、別格の臨場感が得られる。緻密なレストアを施した『ベン・ハー』を本機で見ると、戦車競技の俯瞰映像でパースペクティブの広がりに余裕があり、しかも観衆を描くディテールの精密感もしっかり確保していることがわかる。
70型でフルHDというと画素構造が気になるのではと心配していたが、2.5m程度の距離を保てば問題はない。迫力が増すのでつい画面に近付きたくなるのだが、近付きすぎるとさすがに画素が見えてしまうので、視距離はしっかり確保した方が良さそうだ。
映画THXモードで見た『ハンナ』は、シアーシャ・ローナンの感情を抑えた表情の描写がリアルで、冒頭からCIAに拉致される場面までの冷たい空気感、モノトーンに近い淡彩の映像のなかに浮かぶ柔らかい階調など、難しいシーンを克明に描き出している。
同じように北欧の雪景色から始まる『ラスト・ターゲット』は、室内の深みのある色彩と明るい屋外のコントラストを正確に描き分け、その後に続くイタリア山岳都市の映像へのつながりがスムーズだ。
■LEDエリア制御「メガブライトネス」の大きな効果
エリア駆動を導入した直下型LEDバックライト技術「メガブライトネス」の挙動は少なくとも映画を見ている限りはほとんど破綻がなく、黒みに字幕が浮かび上がるような場面を除けば、エリア駆動固有の漏れ光に悩まされることはない。引き締まった黒再現はもちろん、人物の表情の微妙な変化を克明にとらえるなど、コントラストの高さが生むメリットの方がはるかに大きいという印象を受ける。