iOSの使い勝手と小型化を両立
【レビュー】マルチタッチ/動画対応した第7世代「iPod nano」を試す
■ビデオ再生機能の使い勝手は?
本機はカメラを装備していないが、ビデオ再生機能は搭載されている。前モデルはビデオ再生が行えなかったので、久々の復活と言うことになる。
再生に対応するのは、H.264、MPEG-4とも解像度は720×576ピクセルまで。いわゆるSD動画に限られる。実際に試してみると、1.5Mbps程度の、解像度720×480ピクセルのH.264動画は転送・再生とも問題なく行えた。だがHD解像度の動画はやはり難しいようで1,920×1,080のフルHD動画はもちろん、1,280×720のHD動画も、再生はおろか転送すら行えなかった。
ディスプレイは2.5インチで、解像度は240×432ピクセル。16対9の動画に対応したワイドスクリーンだ。画素密度は202ppiとのことだが、画素間の黒い格子が目立ち、解像感はこの数値ほど高く感じられない。
また、このディスプレイは視野角が非常に狭い。画面を左右や上下に少し傾けるだけで、途端に輝度が落ちたり、色相が変わったりするのだ。
こんな具合だから、暗部階調の表現といった高度な要求を満たすはずもない。黒は潰れまくりで、映画の暗いシーンでは何が行われているのか、皆目見当がつかない。白側もすぐに飽和し、すぐに白飛びしてしまう。また彩度もかなり低く、色再現性能についても非常に低いレベルで、全体的に白茶けたような印象だ。iPhoneやiPod touchのディスプレイがあれだけ素晴らしいだけに残念だ。
率直に言って、画質に敏感な方にとっては、数分のミュージッククリップ程度ならいざ知らず、映画を一本見通すことはかなり難しいレベルだ。iPod nanoの紹介ページにある「手の中の映画館」というキャッチコピーは誇大表現に過ぎるので、改めた方が良いだろう。
なお動画再生機能をヘビーに使うのが難しいことは、画質面だけでなく、バッテリー持続時間の面からも指摘したい。音楽は満充電時で30時間の再生が可能だが、動画再生はわずか3.5時間にとどまっているのだ。
■写真表示で活きるマルチタッチ機能
iPod touchは、「写真」アプリによって写真の表示、スライドショー再生なども行える。iTunesで設定すれば、iPhoto(Macの場合)などの写真ライブラリをiPod nanoに転送可能だ。
写真はアルバム単位でリスト表示され、各アルバムを選ぶとサムネイルの一覧画面が現れる。あとは好みの写真をタップすれば拡大表示される。2本指でピンチイン・ピンチアウトを行うことで、写真の拡大・縮小も思いのままだ。ダブルタップで拡大・縮小したり、拡大してから好みの場所をスクロールして眺めたり、フリック操作で前後の写真に移動したりなど、iOSでおなじみの操作体系がそのまま持ち込まれている。動作もキビキビしており、モタつきはほとんど感じられない。
操作性はよく練り込まれ、動作速度もチューニングが行われている印象だが、前述の通り、ディスプレイ性能があまり良くないので、写真ビューワーとして積極的に活用するのは厳しい。しつこいようだが、動画や静止画表示アプリをプリインストールするのであれば、もう少し質の良いディスプレイを用意すべきではなかったか。