iOSの使い勝手と小型化を両立
【レビュー】マルチタッチ/動画対応した第7世代「iPod nano」を試す
■音質チェック! 第5世代iPod touchと比較試聴
最後に音質をチェックした。参考用に最新の第5世代iPod touchとiPhone 5を用意し、同一音源をSHURE SRH940とSE535を使って聴き比べた。
iPod nanoは、同じ会社が作っているプレーヤーだけあり、iPod touchと全体的な音の傾向は似ている。前回ウォークマンF800とiPod touchの比較を行ったが、両機ほど明確なキャラクターの差は無い。だが、聴き込むと両機の傾向の違いが浮かび上がってくる。
まずはオスカー・ピーターソン・トリオ「You Look Good To Me」をiPod nanoで聴く。低域と高域がともに良く伸びるという印象で、トライアングルの音の、硬質な輝きが鮮烈だ。低域もグッと下まで沈み込み、かつ最低域付近の音の運びも鮮明に描き分ける。ウッドベースの指の運びが目に見えるようだ。ウォークマンに比べiPod touchはこってり濃厚という印象だったが、iPod nanoの音作りの傾向は、その路線をさらに突き詰めた印象だ。
プレーヤーをiPod touchに変えると、高域はnanoに比べてひけを取らないものの、全体的に音が若干腰高になり、ウッドベースの響きが少し軽めに感じる。低音の絶対的な沈み込みはnanoに比べて劣る。とは言え、全体的な音の作り込みの印象は決して悪くない。迫力や押し出し感はそれなりではあるものの、全体的なバランス感は整っているからだ。
ボーカルものを聴いてみようと、RCサクセション「スローバラード」を再生。iPod nanoでは、冒頭のピアノの鮮烈な響きに耳を奪われる。弱音の繊細な響きもあまさず捉え、フォルテの迫力も満点。ダイナミックレンジの広さが見事に伝わってくる。ピアノの音も滑らかさと明晰さが両立しており、解像力の高さを感じさせる、またボーカルもグッと浮き立ち、声の輪郭が際立つ。とは言え背景音の描き込みも高いレベルで、シンバルの切れ込みの鋭さが印象的だ。
iPod touchでは、冒頭のピアノに落ち着きが加わる。清志郎の声も若干引き気味。シンバルの刺すような音の響きも控えめだ。エネルギー感はiPod nanoに軍配が上がるが、反面、音場の広がり感はnanoを上回る。
井上陽水「招待状のないショー」も同様の傾向で、解像感や高域・低域への伸び、またディテールの描き込みはnanoが上。反面touchは聴き疲れしない、広がりがあり、まろやかな音作りが魅力だ。
ロックはThe Ranconters「Consoler Of The Lonely」を試聴。nanoはベースとドラムがグッと沈み込み、重量感をしっかりと感じさせるが、touchでは少し軽めになり、おとなしく感じられる。ボーカルのスピード感もnanoが明らかに上だ。ただしここでも、よりフラットでまとまり感があるtouchを魅力的に感じる方も多いであろう事を付け加えておく。
第7世代iPod nanoの実力を検証してきた。冒頭にも書いたが、前モデルで一部に不評だった操作性を大幅にテコ入れし、マルチタッチ画面やiOSの良い部分を積極的に取り込むことで完成度を大幅に向上させたという印象だ。
ディスプレイの品位が低いのは残念なポイントだが、動画や静止画表示はあくまでオマケ程度と考えるべきで、このレベルでも無いよりはマシ。ビデオポッドキャストやミュージックライブラリの視聴用と割り切るのであれば、これで十分というケースも多いだろう。
筐体の小型化や薄型化も高レベルにあり、音楽プレーヤーとして非常に高い完成度を実現している。薄く小さく軽い専用ポータブルプレーヤーを探しているなら、ぜひ検討候補に入れるべきモデルだ。