[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第24回】クリプトン「KS-3HQM」で“高音質ニアフィールド再生”を楽しむ!
■ヘッドホンでは味わえない“魅力”をKS-3HQMで実感!
上原ひろみさん『MOVE』はジャズのピアノ・トリオ作品。プログレ色が強い曲をアグレッシブに演奏する。
まずはシンバルのシャープさにやられる。音色がシュッと薄刃であると同時に、定位がビシッとピンポイントなのだ。本機のような小型フルレンジをデスクトップを想定したニアフィールド設置で聴くと、定位の明確さはやはりすごい。
ドラムスは奥行きも秀逸だ。スピーカーの後方にほどよく引いて立体的に定位する。もちろん他の楽器の前後左右の定位、広がりも素晴らしく、「スピーカー再生って…いいよね!」という気分が高まる(もちろんヘッドホン再生もやっぱりいいのだが)。
ベースは、絶対的な沈み込みや量感はもちろん小型機の範疇だが、音色の芯や音程感がしっかりしており、音楽的な役割は堅実に果たす。スタッカートのキレの良さなどは、前述のバスレフの改良の効果かもしれない。
LUNA SEA『EDEN』はニューウェイブ的な感触もあるロック。本機はシングルコイルのギターを鋭く歪ませたそのエッジ感を強烈に再現! SUGIZO氏のバッキングがキレにキレまくっている。対するINORAN氏のアルペジオのクリーントーンもパキッと好感触。両者ともフレーズのスピード感もある。
僕は何しろエレクトリックギターをよい感じに再生してくれないオーディオには個人的な興味が湧かないのだが、これは文句なく合格だ。音色を和らげることなく、ガチの再現性で遠慮なく突っ込んできている。
最後はアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」主題歌としてカバーされた名曲『secret base 〜君がくれたもの〜 (10 years after Ver.)』。
ここで改めて本機の定位の素晴らしさを確認させられる。女性声優三人によるボーカルが音場中央に入れ替わり立ち替わりに浮かび上がる様の美しさ! 声質はギターと同じくシャープであるが、耳に刺さる嫌なシャープさではない。鋭敏な描写で三人の声質の違いが際立ってくれてグッドだ。
KS-3HQM。ヘッドホンにハマってハイエンドまでたどり着いてしまった方の「肥えた耳」を満足させつつ、さらにヘッドホンでは味わえないスピーカー再生の魅力、豊かな空間性を存分に感じさせてくれるであろうスピーカーだ。複数のヘッドホンを使い分けるのと同じように、スピーカーという選択肢もご一考を!
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Mac、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。 |
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