[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第29回】JVC「SP-AW500」で“お風呂オーディオ”を楽しもう
■マイクを通した音声認識機能も問題なし! 気持ち良いお風呂の音楽タイム
シリコンシート越しのタッチ操作は意外と違和感が少ない。素材の滑りが悪いのでフリックやスクロールの操作は少しやりにくいが、それも許容範囲内だ。指先が濡れていても操作に支障はなし。またシートがかなり柔軟なので、ぐいっと指を押し付ければ、スマートフォン本体側面の電源スイッチや音量スイッチも操作できた。全体的に、思っていた以上に使いやすい。ただし「スマートフォンの機種によりタッチ画面などの感度が落ちる場合があります」との注意書きが付されているので、その点は気に留めておきたい。
前述のマイクを通しての音声認識も問題なく働き、例えば「鷲崎健の曲を再生して」といった操作が可能なのが便利だ。こちらも活用することで操作性はより向上する。
音質は、まああれだ、音質を求めるような製品ではない。何しろどうせ使われる場所がお風呂なので、音楽にじっと集中して聴き込むわけでもないし、盛大なお風呂リバーブ効果で元の音の良し悪しなんてたいして意味がなくなる(お風呂では元の音があんまりよろしくなくても何となく気持ちよく聴けてしまいますよね)。
というわけでシビアな評価はあえてしないでおくが、例えばベースの重みとかシンバルの綺麗な抜けや響きといったところは、再現されない。バランスとしては完全にボーカルなど中域が主役で、ナロウレンジ。しかしこの製品の利用シーンや想定ユーザー層を考えればそれで問題ないはずだ。僕としても不満は感じない。
なお本機はスピーカーが背面に向いているので、設置条件、具体的には壁面との距離に音の出方が左右されやすい。壁の材質なども影響してくるだろう。僕が自宅のタイル張りのお風呂で試したところでは、背面を壁に近付けると低音が少し強まる一方で、ボーカルなど全体が少しこもった感じになった。根本的な音質が向上するわけではないが、設置の工夫で多少の音質調整はできる。
■楽しめるのは音楽だけじゃない! お風呂でラジオも好感触
さて音質を求めるような製品ではないと言いつつ、僕はラジオっ子でありお風呂で聴きたい音源はそれなので、ラジオ(radiko.jp)とポッドキャストをソースとして、人の声の感触は特にチェックした。
スピーカーの再生帯域の狭さがここではむしろ功を奏しているのかもしれないが、高域が丸まって耳当たりが優しく、それでいて聞き取りやすい。耳当たりの優しさはお風呂リバーブの効果でもあるだろうが、それも含めてトータルで好感触だ。伊集院光さん、田村ゆかりさん、佐藤亜美菜さんなど、それぞれの声の魅力や表情、豊かな語り口調も十分に伝わってくる。全然問題なくラジオを満喫できる音だ。これなら個人的には満足である。
また、本連載の扱う範囲からは離れるが、人の声がちゃんと表現されるということは、ワンセグや、レコーダーとスマートフォンを連携させてのテレビ視聴で、ドラマやニュースも十分に楽しむことができるだろう。
今回はちょっと気分を変えて、音質の良さを基本としたオーディオアイテムではなくて、音と触れ合う時間を増やしてくれるオーディオアイテムを紹介してみた。いつでもどこでもお風呂でも、何かしらの音が流れていてくれた方が楽しいし落ち着く。そんな方におすすめの一品だ。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Mac、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。 |
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