[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第30回】オススメのスマホ高音質化アプリを紹介! 〜Android編〜
例えば、極端に高い音や低い音は、耳の特性以前の問題として、イヤホンがその帯域の音をきちんと再生してくれないことには(その帯域まで不足なく再生できる性能のイヤホンでないと)聴こえるわけがない。また小さな音を聴きとれるかどうかにはイヤホンの遮音性も関わってくる。であるので、測定結果とそれに伴うイコライジングは使うイヤホンによって異なってくるのだ。
以下は手近にあったイヤホン2モデルでの測定結果の違いだ。エントリー価格帯のBA型シングル構成においては優秀モデルと言えるソニー「XBA-1(現行モデルXBA-10の前世代機)」と、ハイエンドのBA型マルチ構成モデルの代表であるSHURE「SE535」での測定結果を並べてみた。
XBA-1での測定だと低音と超高音が少し聴き取りにくくなっており、それを補正するイコライジングが行われる。XBA-1はBA型シングルドライバー構成であるので再生帯域の面では不利があるわけだが、それをしっかり測定して補正する形だ。
SE535での測定だと、全ての帯域がほぼ完璧に聴き取れ、低音と超高音のイコライジングも最小限になる。BA型3基のマルチドライバー構成による広帯域再生が実証された格好だ。
中音〜高音のイコライジングはどちらのイヤホンでもほぼ共通なので、そこは被測定者である僕の耳の特性なのかもしれない。
つまりこのアプリ、ハイエンドよりはエントリークラスのイヤホンと組み合わせたときの方が効果が大きい(より大幅に補正される)と言えるだろう。そういった意味からもライトユーザーには特におすすめだ。
■イコライジングの効果を試聴レビュー!
イコライジングによる補正の効果を実際に聴いて確認してみよう。保存したイコライジングは簡単にオンオフして効き比べることができるのだ。
XBA-1では、ドラムスの太さ、エレクトリックベースの音像の濃さや力強さに改善が見られる。ベースは音程感と音色の芯も明確さを増す印象。ピアノはやや硬質な艶を帯びてキンという抜けがよくなる。ギターの抜けも同様に好感触。シンバルはチャキチャキとしたキレを増し、特にライドシンバルは輝きが強まる。素のXBA-1ではなだらかに落ちていた低音と高音に、逆に少しだけアクセントを付けた感じだ。
それらの変化は極端ではなく自然な調整だが、しかしその効果は小さくはない。しばらくイコライザーオンの状態を聴いたあとにオフにしてみると、音がさびしいと言うか、しょぼーんとしてしまう感じだ。
SE535では、音場全体が少し明るくなり、全体の陰影、メリハリが強まる印象。ベースは押し出しが少しだけ強くなり、ガッシリゴツゴツとした骨太感も少し増す。XBA-1の場合ほどには変化の幅は大きくないが、それでも「ひとさじ」を加えてくれる。
ただし音の響きの生かし方や音色の素直さといった要素は、イコライザーをオンにすると僅かながら弱まるように感じる。イコライザーは万能ではないので、トレードオフでマイナス面が出ることも十分にあり得るわけだ。
というわけでやはり、エントリークラスイヤホンとの組み合わせでは特に効果が大きく、そして良好だ。
また使い方としては他に、このアプリで測定したイコライザーのグラフを参考に、それを他の再生アプリのイコライザー設定に移植してみるというのも面白そうだ。うまくできれば、使い慣れた再生アプリの音質を適当にチューニングできるかも?
ただ、このアプリの狙いはいわば「音質の平均化」。イヤホンの個性をある面では潰すとも言える。実際にはそんな大それた効果はないわけだが(XBA-1とSE535が似たような音になるなんてことはなかった)、賛否は分かれるかもしれない。しかし何しろ無料でインストールできるこのアプリ。Androidスマートフォンユーザーの方は気軽に試してみてはいかがだろうか。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Mac、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。 |
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