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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第42回】ポータブルなのに重量級!光城精工の真鍮ポタアン「KM01-BRASS」を聴く

公開日 2013/04/12 16:43 高橋敦
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■使い込むほど渋みを増す筐体仕上げ − TSUGARUは漆塗りの特別モデル

まずKM01-BRASSは塗装等による保護処理や防錆処理をせず、真鍮の地肌を露出させている。これによって新品のときには輝きを放っていた筐体が、使い込んでいけば傷や酸化によって渋みを増すというのがメーカーの狙い、曰く「エージング」だ。

ボリュームが電源スイッチを兼ねている。同じく前面にアナログの入力とヘッドホン出力を装備

写真では伝わりにくいかもしれないが、KM01-BRASSの表面は単純な磨き上げではなくうっすらとスピンの文様が刻まれており、その質感を強調している

僕はこの狙いには大いに賛成。長く使い込んでいける製品こそ、使い込んだ際に味わいが出るものであってほしい。古くからのカメラ趣味の人には、カメラの金属ボディの塗装の剥げ具合のかっこよさなどを思い出してもらいたい。…いや僕自身はカメラ趣味の人ではないのだが、何というかフィーリングとして。

ブランド名の刻印にまでも精密感がある、隙のない仕上がり

そしてKM01-TSUGARUはさらにスペシャル。KM01-BRASSに漆塗りを施した、贅沢かつ侘び寂びを感じさせるモデルだ。

強い光を直接当てるとこのように、水面に浮かぶオイルの粒のような複雑で豊かな色彩が現れる

しかも青森県平川市の津軽塗職人である長尾武光氏の手によるこの漆塗りは、普通の漆塗りではない。氏が独自に編み出した技法「漆華つがる(はなつがる)」によるものなのだっ!

…例によって「っ!」と叫んでしまったが、もちろん僕自身もその技法は今回初めて聞いたし初めて目にする。以下にメーカーの解説を要約させていただく。

漆華つがるは伝統的な漆塗りの技法に加えて泡を使って模様を生み出す技法で、その名の通りに華のような模様が特徴。光の具合によって立体的な模様が浮かび上がったり、ワニ皮のようにも見えたりと、多彩な表情を持つ。

実際に実物を見ると、何と表現したらよいのかわからないほどにその表情は豊かだ。ホログラムのシールのような(僕と同じ30代中盤の方には、ブラックゼウスや魔肖ネロみたいなアレというと伝わるだろうか)七色の反射を見せたりもする。

光の当たる角度などによって、筐体の部分部分で異なる表情を見せることも特徴

明るすぎない環境だとこのように輝きは少し落ち着くが、独特の文様はやはり印象的

ただし今回お借りできたKM01-TSUGARUは試作版とのことで、筐体はアルミ製とのこと。実際手にするとKM01-BRASSよりも軽い。製品版は前述のように、KM01-BRASSと同じ真鍮製の筐体に漆塗りが施される。

さてこれらのモデル、KM01-BRASSは300台限定生産、KM01-TSUGARUは完全受注生産で納期は三ヶ月以上。それだけ手間のかかる製品だということだろう。

もちろん中身の回路も筐体にふさわしい内容になっている。

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