[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第44回】Bluetoothとひと味違う? 謎のワイヤレス伝送方式「NearFA」に迫る
■NearFAが成功するスマホの置き方検証
最初に、ZP201BK-JPで「天板に重ねて置く」パターンを試す。左右や表裏の向きによっても状態が変わる可能性もあるので色々とチェックしてみた。何しろ技術の理屈がわからないので、「理屈の上で正しい置き方」みたいなこともわからない。手探りだ。
結果としては、テスト機のiPhone 5では、
1)iPhoneの画面を上に向けて正面から左側にホームボタンが来るように置く
2)iPhoneの画面を下に向けて正面から右側にホームボタンが来るように置く
…以上2つの置き方でのみ、良好な再生を確認できた。その状態から少しでもずらすと、途端に本機のスピーカーからの再生が途切れる。なかなかシビアだ。
続いてスタンドを使ってiPhone 5を立てる場合だが、
1)iPhoneを縦にして画面を自分側に向けてスタンドのスリット中央部分に置く
2)iPhoneを横にして画面を自分側に向けてホームボタンが左に来るように置く
…こちらも以上2つの置き方で良好な再生を確認できた。
続いてはEEA-YW0898だが、こちらは至極シンプルな結果となった。
1)EEA-YW0898本体の電源スイッチがある側にiPhoneのホームボタンがある側が来るように置く(表裏はどちらでもOK)
…以上1パターンの場合のみ、良好に動作した。
いずれの機種でも、ワイヤレスとは言ってもそれほど自由な置き方をできるわけではないようだ。それでもケーブル接続不要の身軽さはある。それにiPhoneを自然な向きで置いた場合にはちゃんと動作するようになっているので、実用上は問題ないだろう。
■高橋敦がちょっと考えてみた「NearFAの仕組みとは?」
しかしそれにしても理屈がわからないままというのも悔しい。そこでちょっと考えてみよう。たぶん大きなヒントは、これらのスピーカーと無線接続されている状態でも、iPhone本体のスピーカーからも音が出ていること。そしてボリュームを下げたりイヤホンを接続したりしてiPhone本体のスピーカーを消音すると、これらのスピーカーからも音が出なくなることだ。
実際、EEA-YW0898のパッケージ裏面やマニュアルを読むと、スマートフォンの内蔵スピーカーから音を拾っているっぽい記述や、内蔵スピーカーを搭載している機種でないと動作しないようなことが書かれている。
ということは、NearFAはiPhone内蔵スピーカーの動作を何らかの手段でキャッチし、それを信号に再変換して増幅しているのではないと考えられる。スピーカーは磁気回路だから、コイルを使ったギターのピックアップのようなもので、その動きをキャッチできるかもしれない。両機がモノラル仕様であるのも、iPhone内蔵スピーカーがモノラルであることに起因するのだとすれば合点がいく。
仮にその理屈であれば、設計にはノウハウが必要だろうが、複雑でも大規模でもない回路でそれを実現できそうだ。その点はNearFAのコストの低さとも合致する。
なおこれもおそらくだが、ZP201BK-JPがiPhoneシリーズのみに対応とされているのは、スピーカーの動作をキャッチする回路の配置が、iPhoneの内蔵スピーカーの位置に最適化されているということではないかと思われる。
さて、次はいよいよ2モデルの音を聴いてみよう。