[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第44回】Bluetoothとひと味違う? 謎のワイヤレス伝送方式「NearFA」に迫る
■これがNearFAの力だ!
共に音質を重視した本気オーディオ製品ではないので、使う側もそれほどの音質は要求しないだろう。しかしあまりにも音が悪くてはだめだし、この手のポータブルアンプでのいちばんの役割である「音量を稼ぐ」がどれほど実現できているかも気になるところだ。
まずZP201BK-JPであるが、これがなかなか悪くない。iPhoneの音量を最大にまですると音が割れるが、そこから少し下げた状態でバランスの良い再生音を得られる。iPhone内蔵スピーカーでは全く感じられないベースやドラムスの太さや厚みもある程度は引き出してくれる。高音も低音も全体にやや荒っぽい音ではあるが、その分だけ迫力も出ている。女性ボーカルはクリアとは言えず、ラジオ的なナロウレンジさやざらつきもある。しかし感触は柔らかで耳障りではない。
音量も、それほどの大音量を求めないのであれば十分だ。僕の自室は10畳ほどだが、その部屋の全体に余裕で音を届けることができる。なお無音時も再生中も、微かにではあるが、「ジー」「ザー」という無線ノイズのようなものが混じっているが、再生中は気になるほどではない。
EEA-YW0898はZP201BK-JPよりも少し重心が高く、やや明るくシャープな音調だ。シンバルの荒っぽい抜けなどは悪くない。低音側はひとつひとつの音のクリアさや分離がいまひとつで、例えばベースの細かなフレーズやグルーブなどは楽しみにくい。女性ボーカルは正直に言うとかなり不明瞭で、輪郭にジリジリというノイズ感や歪みも混じる。
…というように、音質的にはよろしくはないのだが、音量的にはこちらも満足できる。ZP201BK-JPと同程度の音量が確保されており、「出先でお気に入りの曲を友人たちに聴かせたい」といったような用途にはしっかり活躍してくれるだろう。この安さと小ささを考えればそれで十分だ。なお「ジー」「ザー」というノイズはこちらも同じように混じっている。
音質チェックとしてはやや辛口の評価にはなってしまった。しかし最初に述べたように、この価格やサイズのポータブルスピーカーに音質がどうこうということまでは求めないという方、そういった用途であれば、話は別だ。両機種ともにユーザーを満足させてくれることと思う。
■NearFAという技術自体の音質は?
ところで、「NearFAという技術自体の音質はどうなの?」というところが気になる方もいるだろう。だが今回試した2機種が共に音質を重視した製品ではないので、判断は難しいところだ。仮に、実はNearFAが十分な音質を確保した方式だったとしても、その実力が発揮されていないという可能性がある。
しかし両機種ともに、いかにも無線ノイズ的なものが混じっていたことからすると、例えばS/NはNearFAの弱点かもしれない。またその動作の理屈が前述の推察に近いものであれば、音質的には多くは望めないだろうと考えられる。
というわけで今回は謎の新無線通信技術、NearFAと同技術搭載製品をチェックしてみた。ケーブルも設定も不要なワイヤレス接続はちゃんと実現されており、使い勝手はお気軽・お手軽そのもの。お値段やサイズもポータブルスピーカーらしいところにしっかりと収まっている。今後採用製品が増えてくるのか、ちょっと気になる存在だ。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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