HOME > レビュー > 【第48回】輝け!“低音ホン”選手権 − 低音再生が充実したヘッドホン4機種を聴き比べ

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第48回】輝け!“低音ホン”選手権 − 低音再生が充実したヘッドホン4機種を聴き比べ

公開日 2013/05/31 11:15 高橋敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

オーディオテクニカ「ATH-WS99」:“ソリッド”ベースの名にふさわしい引き締められた低音

次はオーディオテクニカのATH-WS99。「SOLID BASS」シリーズの上位モデル。

ドライバー口径は53mmと大きい。それが生み出す低音を、ハウジング内のケースに設けた2重構造の空気室によって空気のダンピング効果(空気のバネ性を生かした制動)を高めるダブルエアチャンバーメカニズムで増強・調整して、締まりのある低音として再生する。また切削アルミニウムのハウジングにドライバーを直接マウントすることで不要振動を排除し、音のスピード感や厚みも高めている。

アルミのハウジングはブラック&スピン加工。なおケーブルは延長ケーブルタイプで、延長部はノーマルなものとマイク付きのものの両方が付属

耳をすっぽりと覆うアラウンドイヤー型のイヤーパッド。今回の4製品の中で装着感の良好さ、軽さはトップ

以下が傾向表だ。


まずは印象を簡単にまとめると、“ソリッド”ベースの名にふさわしい引き締められて精悍な低音が最大の特長。低音の深みや太さを低音ホンと呼べるレベルに確保しながら、それでいて低音に余計な緩さがない。オーテクらしさそのまんまに低音ホンを作ったらこうなりましたという感じだ。

ジェームス・ブレイクさん「To Care(Like You)」の例の強烈なベースは、音色の芯が強く太いといった感触。骨太・筋肉質・低脂肪といったところだ。また横や奥行方向への厚みよりも、縦(下)にすっと沈み込む感じが印象的。沈み込みの感触がドォウンではなくすっとしているところもポイント。

ボーカルのクリアさやハイハットの金属質の精密感といった部分も当然問題なし。このあたりもオーテクらしさが確かに生かされている。空間の印象は、密閉型でなおかつ低音重視の音作りのヘッドホンとしては意外なほどに自然に広がって余白も十分に感じられる。

ミシェル・ンデゲオチェロさん「Dead Nigga Blvd.(Pt. 1)」のベースは、芯と腰が強い!前述の骨太筋肉質の印象がここでさらに強まる。ゴツンと来るベースだ。アタックのよさもその感触に一役買っている。低音の制動も見事で、休符がぴたっと決まっている。そのためスタッカートが生み出すグルーブ感がより明確だ。

ドラムスはこの曲にフィットしたタイトな響き。スネアドラムのしまった音色やハイハットシンバルの開閉のシュパッというキレも文句なし。ギターのカッティングもキレている。

こちらも続けて基本三点セットの上原ひろみさん、相対性理論、宇多田ヒカルさんでポイントをいくつか確認。上原さんにしても相対性理論にしても、全ての楽器のアタックが揃っている感じでリズムに一体感がある。骨太の音色との相乗効果もあって演奏の感触が実にがっしりとしてくれる。

ピアノの硬質感やシンバルのシャープさなど、高音側のタッチもよい意味で厳しい。シンバルは強打でも歪み感を強めずに透明感の強い音色だ。こちらも鈴鳴り感もある。
相対性理論や宇多田さんのボーカルは凛とした印象。シャープな成分や声を掠れさせる表現の甘くせずに描き込む。

次ページどんどん行こう。次はbeatsのmixr。今回の4機種の中では一番コンパクトなモデルの低音は?

前へ 1 2 3 4 5 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE