[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第48回】輝け!“低音ホン”選手権 − 低音再生が充実したヘッドホン4機種を聴き比べ
■beats by dr.dre「mixr」:くっきりと明確なベースにゴツンと来る音圧
次はbeats by dr.dreのmixr。グラミー受賞のプロデューサー&DJであるデヴィッド・ゲッタ氏の協力で生まれたモデルで、クオリティを維持しつつデザイン性と携帯性を高めたことがポイント。実物を見るとデザインのインパクトは確かに強いし、コンパクトさについても今回ピックアップした中では最小クラス。
まず傾向表は以下のようなところ。
では詳しく見ていこう。
ジェームス・ブレイクさん「To Care(Like You)」の例の強烈なベースは、そのくっきり感というか明確さがすごい!そしてゴツンと来る音圧もすごい!クリアで強靭な低音だ。ハードタッチな低音を好む方には特におすすめできる。下への沈み込みも十分にディープ。またベースは音色の艶やかさも好印象だ。低音の太さや重さは低音ホンとしては中の上くらいなのだが(一般レベルからすると十分以上)、しかし低音の質としては非常に高い。
ボーカルやハイハットもクリア。それらの音色自体がクリアであることに加えて、低音が引き締まっているのでそれにマスキングされることもない。空間の余白もほどよく残されている。
ミシェル・ンデゲオチェロさん「Dead Nigga Blvd.(Pt. 1)」のベースも期待通りの感触。やっぱりとにかくまずは音圧がすごいし音の立ち上がりも速い。音色の張りの強さもよい。ボーリングのボールが高速で迫ってくるような、硬質で危険な迫力がある。
他の楽器では特に、ハイハットシンバルが気に留まった。そこにカメラがクローズアップしたかのような、接写的な精密感のある描写だ。ギターのパキッとクリアな音色も好感触。
基本三点セットの上原ひろみさん、相対性理論、宇多田ヒカルさんで色々と確認。ベースはやっぱり本当によい音だ。オーディオ的によい音であることはもちろん、ベーシストとしてこういう音を出せたら満足だろうなあという妄想が生まれるほどに、音楽的にがっつりいい感じ。強烈な存在感を放ちつつ他の楽器を邪魔していない。
ドラムスも図太くしかしタイトという感じで、ベースの感触とマッチしている。両者が合わさってのリズム・セクションは実にがっしりとして強靭だ。シンバルは、曲や場面によっては少しだけ音色が詰まるのだが、基本的には癖のない、よい意味で普通の音色。
相対性理論と宇多田さんのボーカルは少しだけ硬い気もするが(瞬間的にキンとくる場面がある)、使い込むうち聴き込むうちにヘッドホンがこなれて来て耳もなれてきて落ち着くかもしれない。歌の低音に無駄な膨らみがなく、歌の輪郭、細部が見えやすいところは美点だ。
次ページ最後はデノンの「URBAN RAVER」シリーズのフラッグシップAH-D400で〆る!