【特別企画】オペアンプをMUSESに変えて高音質化
ASUSのUSB-DACに上位機種登場!「Xonar Essence One MUSES Edition」レビュー
ボーカルを中心とした試聴は女性ボーカルとナイロン弦ギターのユニット、FAKiE「Ride on Time」で行った。こちらはCDからリッピングの44.1kHz音源だ。
声は実にクリア。ほどよい硬質さが声の艶を際立たせ、このボーカルの再現としては見事に適当。声の伸びやビブラートも滑らかだ。8倍で352.8kHzとするアップサンプリングの効果もわかりやすかった。声の輪郭やその周りがすっきりとし、ボーカルの立ち姿がより明瞭になる。声の響きの成分もより生かされて、それも楽しめる。
続いては本機のヘッドホン出力でのヘッドホン再生を確認。印象はライン出力でのそれとのズレが少ない。癖がなくて透明度の高い表現だ。
全天候型ポップ・ユニットな相対性理論の「ミス・パラレルワールド」は48kHz音源。この曲はベースとハイハットシンバルがリズムの核だが、どちらも好感触だ。低音側のベースは制動がしっかりとしており、音色としてもフレーズとしてもくっきり感がある。リズムの明確さ、ドライブ感が気持ちよい。
高音側ではハイハットシンバルがピシッと薄刃でキレがよい。耳障りではない良質な鋭さだ。やくしまるえつこのボーカルも同様に、彼女の豊かな倍音成分を心地よいシャープさとして生かしている。
ボーカルは宇多田ヒカル「Flavor Of Life - Ballad Version -」でも好印象。こちらはCDからの44.1kHz音源。やはりやや硬質でクリアなタッチだ。
また特筆したいのは、彼女の声の低音のディープな伸び。ベースやドラムスでも発揮されていたところだが、低音をしっかりと出しながらも緩みのないタイトさもあり、彼女の低音の深み凄みを引き出している。
細かな印象を述べればきりがないが、いちばん伝えたいのは、冒頭に述べた「透明度の高さ」だ。システムの中に置いて本機自体の音を主張しすぎないのだ。
システム構築の手法として、スピーカーやヘッドホンは自分の好みで選び、DAC/ヘッドホンアンプはそれらの良さを引き出すモデルを選ぶというのは、常套手段のひとつだ。本機にはそういったポジションへの適性がある。例えば、いま使っているオーディオシステムやヘッドホンの音が気に入っていて、それをそのままグレードアップしたいという方には、本機は特にフィットするはずだ。
ぱっと目立つ個性的な音というわけではない。しかしそのことこそが、本機の得がたい価値なのだ。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |