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音質担当が異なる3機種のクオリティを検証

ヤマハの新“AVENTAGE”「RX-A3030/2030/1030」、3モデルの音の違いとは?

公開日 2013/07/04 12:35 大橋伸太郎
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A2030/1030の2機種に関して、CDやネットワークオーディオ等のステレオ再生に関してはスペックほどの差は感じられない。価格対性能比で非常に優秀であることは両機とも同じで、試聴に使用したスピーカーB&W「802Diamond」を楽々とドライブしてみせる。


RX-A2030

RX-A1030
CD再生に関してデジタル入力を重視するのがヤマハの特徴で、100万円超の他社製高級CDプレーヤーからのアナログ入力と比較して遜色がないのは感嘆に値する。ピアノ、ボーカルなど楽器の固有の音色の自然な表出に優れ、深いデプスの音場が現れる。アナログディスクリート構成の利を活かしたパーツの吟味とファインチューニングの追い込みの結果、ノイズを抑制し情報ロスを極微に止めることに成功。消えてしまいがちな演奏の細やかなディテールと階調感を保持出来ている。シャーシ構造やパワー部の出力ワッテージが違うのに、A1030とA2030ではこの点でそれほどの差は感じられない。

HDオーディオのサラウンド再生ではA2030の伸びしろが鮮明に現れる。A1030 が7.1ch、A2030が9.1chというch数の違いは別として、前者はDAC部にES9006を1基搭載するが、後者では同じものを2基搭載するため分解能と情報量の差が大きいのだ。A1030ですでに価格対性能という点で高い音場表現力を得ているのだが、A2030の方が傑出しているのである。

今回視聴したBDソフトは、『レ・ミゼラブル』(7.1ch)と『ゼロ・ダーク・サーティ』(5.1ch)。レミゼの場合、クライマックス(コンミューン蜂起)のアンサンブルでのセンターchの解像力に余裕があり、アンサンブルで声が重なってもスピーカーに張り付かず、美しく立体的に描写する。2人のソプラノ、アマンダ・セーフライドとサマンサ・パークスの声の空間に浮遊するような可憐な表現は、もっと高級なアンプまで含めこれまでには聴けなかった非凡さだ。SNと情報量確保で<静と動の対比>を最大限引き出している。開発者が新しいDACの音質上の特徴を最大限引き出すべく「狙って」やったチューニングがピタリ的中した印象である。

もう一本のゼロダークでは、終盤のクライマックス、未明のステルスヘリによるアジト襲撃シーンを視聴した。A1030でも移動表現、SEの質感、重量感とも高いバランスにあるが、A2030はステルスヘリのch間の移動軌跡が一段とシャープに描写され、墜落シーンでは頭上に巨大な質量の物体が制御出来ずにグルグル旋回する有様が圧し掛かるように描写され、恐怖を覚えるほどだ。

大橋伸太郎が語る、第三世代“AVENTAGE”3機種の個性の違い

RX-A2030のサラウンド再生を非凡なバランスと評したが、では最上位のRX-A3030と比較した場合はどうだろう。


RX-A3030
A3030の場合、使用DACがSABRE Premier中上位のES9016にグレードアップされておりアンプの地力も強大だ。しかし、比較して聴いてもA2030が色褪せるということはない。

A3030が狙ったものは、CD、ハイレゾ等、家庭での音楽再生全てを高音質で実現する、ピュアオーディオ領域まで包含するサラウンドアンプの最上位である。

BDのサラウンド再生に重点を置くならば、RX-A2030が3機種中最もバランスが高く、サラウンド上級ユーザーにとって「買い」の一台と断言出来る。

新AVENTAGE3機種それぞれの個性をまとめると、ネットワークオーディオからBDのサラウンドまでオールラウンドプレーヤーのRX-A1030、BDのHDオーディオサラウンド再生に非凡な表現力を聞かせるRX-A2030、そして“音の一流シェフ”とでも表現するべきピュアなニュアンスを味わわせるRX-A3030。三者三様の表現と個性を聴かせる<ドラマティックな新AVENTAGE>である。

大橋伸太郎 プロフィール
1956年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。2006年に評論家に転身。西洋美術、クラシックからロック、ジャズにいたる音楽、近・現代文学、高校時代からの趣味であるオーディオといった多分野にわたる知識を生かした評論を行っている。

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