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内蔵アンプも「S-Master HX」に進化

【レビュー】ハイレゾウォークマン「F880」の音質を検証 − 「PHA-2」デジタル接続も試す

公開日 2013/09/25 15:16 山本敦
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F880シリーズの音を聴いてみる

それでは実際に、F880シリーズの気になるサウンドをチェックしてみようと思う。今回は16GBの「NW-F885」(ブルー)の実機を借りて試聴を行った。参考までに前機種F800シリーズの16GBモデル「NW-F805」や、筆者が普段使っているiPod touch(第5世代)との比較試聴も行った。

従来モデル「NW-F805(左)」と並べたところ

iPod touch(右)と並べたところ

ヘッドホンのリファレンスにはソニーの「MDR-1R」を使用。音楽プレーヤーアプリは「W.ミュージック」を使って聴いている。音源のファイルはウォークマン F800、iPod touchと公平に比べられるよう、同タイトルを44.1kHz/16bitのWAV形式で保存したものを用意した。

また「ClearAudio+」をはじめ、「DSEE」や「クリアフェーズテクノロジー」など各種音質設定についてウォークマンはオフにして聴いている。なお「ClearAudio+」は、そもそも工場出荷時はオフに設定されている。

JUJUのアルバム「DELICIOUS〜JUJU's JAZZ 2nd Dish〜」より『Take Five』は、肉厚で豊満なボーカル。バンドの演奏は楽器の音色など、少しビビッドで演出の強さも感じられるが、表情がとても豊かだ。F800に比べてバンドの音の分離が良くなり、解像感も明らかに向上している。

Richard Pageのアルバム「Solo Acoustic」から、ボーカルとアコースティックギター1本の弾き語りによるタイトル『Kiss On The Wind』を聴く。濃厚なサスティーンの効いたギターのサウンドだ。中域の音が束になって、ドカンとぶつかってくるようなエネルギーあふれる演奏が楽しめる。高域の伸びにも不足は感じられない。F880とF800を比べると、細かな音を拾い上げる能力はF880の方が上だ。

続いてMichael Jacksonのアルバム「This is it」から『Billie Jean』を試聴。冒頭のベースラインはどっしりとした量感を備えていながら、一音ずつ異なる弦の響き方が見えてくるようなディティールの豊かな再現力も持ち合わせている。ボーカルがエネルギッシュで、高域の見晴らしはそれなりだが、中低域を中心に密度の濃い演奏が楽しめる。

「ClearAudio+」をオンにした状態でもう一度JUJUを聴いてみる。全体の量感が中低域にシフトして、オフの状態よりもボーカルなどの高域の伸びが少し足を引っ張られるような印象だが、バランスが破綻するようなことはなく、メリハリの効いた、よりエネルギッシュな演奏に変化する。外出先でのポータブルリスニング時などには、むしろ積極的に利用しても良いだろう。

192kHz/24bitのハイレゾ音源はBill Evans Trioのアルバム「Waltz For Debby」から『Milestone』(FLAC)と、Norah Jonesのアルバム「Come Away With Me」から『Don't Know Why』(AIFF)の2曲を聴いた。比較のためにAstell&Kernの「AK120」も用意したが、これは機能や価格に大きな差があるハイクラスのプレーヤーなので、あくまで参考用としてである。

「AK120(右)」と並べたところ

ハイレゾ音源は192/24のBill Evans Trio『Milestone』とNorah Jones『Don't Know Why』を聴いた

CDクオリティのソースを試聴した際の全体の印象と同じく、ハイレゾ再生もビビッドで力強く、ややウォームなサウンドが特徴という印象を受けた。ビル・エヴァンスは硬質なピアノのタッチに温かみが乗って、その演奏がやや情熱的にすら聴こえる。ベースラインは重心が低く、量感を程よく備えたタイトな音色を響かせる。ドラムスのハイハットは音の消え入り際まで細かく再現され、ハイレゾならではのS/N感の良さや解像感の高さを演奏の随所に実感することができる。

ノラ・ジョーンズはボディのしっかりと備わった、夏の陽射しのように明るく力強いボーカル。コーラスまでも濃厚に感じられる。若干ボーカルが強すぎると感じられる場面もあった。ピアノやギターなど、バンドの演奏も色彩感豊かでアクティブな印象。ナチュラルさにこだわるというより、音楽のエンターテインメント性を重視した音づくりだ。

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