HOME > レビュー > フィリップス“Fidelio”「X1」で山之内正がクラシックを徹底試聴する

Fidelioのフラグシップ機は名演・名録音をいかに再現したのか?

フィリップス“Fidelio”「X1」で山之内正がクラシックを徹底試聴する

公開日 2014/01/16 11:01 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■傑作オペラの名を冠する“Fidelio”シリーズの最上位モデル

Fidelioはフィリップスのオーディオ製品のブランドとしてすっかりおなじみになった。ベートーヴェンが書いた傑作オペラ《フィデリオ》に由来するブランドネームは、Hi-Fiの語源の一つFidelity(=忠実)も連想させ、まさにオーディオ機器にふさわしいといえる。


「X1」はFidelioブランドに属するヘッドホンのフラグシップ機で、徹底して音質を追い込んだ注目機だ。今回は広大なダイナミックレンジを持つクラシック音源を中心に試聴し、X1の実力を探った。

サイズに余裕のある柔らかめのイヤーパッドが耳を包み込み、確実な装着感が心地よい。長さ3mのケーブルは片出しなので取り回しがよく、オペラなど長い作品をじっくり聴き込む用途にも向く。50mmの大口径ユニットを積むのでハウジングはけっして小ぶりではないが、適切な重量バランスと確実なホールド性のおかげで長時間聴き続けても疲れにくい点に好感を持った。

山之内氏は自身の試聴室にて、様々なプレーヤーやヘッドホンアンプと組み合わせながら「X1」をじっくりと聴き込んでいた

密閉型ほどではないが、オープン型としては周囲の音を遮る効果が大きいため、弱音が雑音に埋もれる心配もない。ピアニシモの精妙な表情や演奏家の息遣いなど、デリケートな情報の再現性を重視するクラシックファンならそうした本機の資質を歓迎するに違いない。

■再生レンジに余裕があり情報量がぎっしり詰まっている


クラシックのソースを忠実に再現するのに不可欠な情報量を余すことなく引き出していると語る山之内氏
ショスタコーヴィチの交響曲第15番(DSD2.8MHz音源)を聴くと、静寂から音が立ち上がり、ほどなく大音響になだれ込む第一楽章のダイナミックな表現を忠実に再現し、その迫力に圧倒された。ゲルギエフの采配が細部にまで及んでいるため、たんなる大音響ではなく、曲の構造やオーケストレーションの個性が自然に浮かび上がってくるのだが、X1で聴いているとそうした演奏上の特徴を鮮明に聴き取ることができる。

低音域から高音域まで再生レンジに余裕があるため、オーケストラやピアノなど音域の広い曲を聴くと、暗騒音の領域から高次の倍音の音域まで、情報がぎっしり詰まっていることがよくかわる。オーケストラの低音楽器は量感が豊かでスケールが大きく、ピアノの低音部は楽器の重量感を伝える分厚さが備わる。

次ページX1でハイレゾからSACDまで様々な音源でを聴いた

1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: