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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第81回】音楽をもっと楽しむための“イコライザー”設定テク&解説

公開日 2014/04/04 16:34 高橋敦
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■実践!iTunesのイコライザー設定テクニック&解説

僕の現行再生システム(ヘッドホン環境)は現状でノーイコライジングで満足できる僕好みのフラット&高解像度系の音におおよそ仕上がっている。なので今回は機器の癖を補正する使い方ではなく、おおよそ仕上がっている音をあえて少し崩して、ちょい派手めに楽しみたい気分用のイコライジングを狙ってみることにした。

というわけでいきなりだが表を用意した。表がでかくて文字が小さくて読みにくいと思うが、グライコの各バンド(各スライダー)の周波数が、人間の聴覚の特性、曲全体、各楽器においてどのようなポイントになっているのかをまとめたものだ。ざっくりとした内容だが、さしあたっての参考にしていただければと思う。


低域/中域/高域/超高域がそれぞれ具体的にどの周波数帯域を指し示すのかについては標準的な決まり事はない。表での区分はあくまでも「今日の僕の感覚では」だ。参考までに2ウェイスピーカーの場合、2〜4kHzあたりから上をツイーターの担当帯域としている場合が多い。

今回は中島愛さん「愛の重力」をより楽しめるようなイコライジングに挑戦してみる。ポップスなんだけれど演奏はフュージョンで展開はプログレという面白い曲で、様々な音がバランスよく収められていてイコライジング課題としても面白そうだったので。

まずコツとしては、最初はスライダーを大袈裟に動かすことだ(しかし最大だと効果が破綻してしまうことも多いので注意)。それを試してみることで、そのスライダーの周波数がどんな変化をもたらすのかを把握できる。それが把握できてからスライダーの位置、つまりその周波数の増減を適当な加減に調整しよう。

というわけでこの「愛の重力」では、まずはベースを少し持ち上げてみようと、低域のスライダーをいくつか試してみた。

32Hzはベースの音色そのものへの効果は大きくはない。曲の低音の空気感が少し豊かになったりすっきりしたりする感じだ。今回はこの帯域はいじらないでおく。

64Hzは実に良い効き具合だ。ここを増減させるとまさにベースのボディというか実体的な重みを調整できる。ここを少々持ち上げる設定にしてみる。

125Hzはこの曲の場合、場面によっては効果が薄く、場面によっては効果が大きすぎる。ベースのフレーズの音域との兼ね合いだろう。例えばこの帯域をプッシュした場合、効果が薄い場面ではベースの中域にほどよい濃さを加えられるが、効果が大きくなる場面では濃すぎてモコモコになってしまう。ベースが不安定になってしまうので、下手にいじらない方がよさそうだ。結果、低域については64Hzを少し持ち上げるのみとした。


中域は音楽全体にしても個々の楽器にしてもそれらまさに中心であり、再生時のイコライジングでも重要だ。

250Hzは、低域と中域の間くらいの、良く言えば暖かな、悪く言えばもわっとした厚みの成分を調整できる。例えば目当ての曲や手持ちの機器のもわっとした感じが気になる場合、この帯域を少し削ることでそれを緩和できるかもしれない。今回はノータッチ。

500Hzは、この曲この歌の場合は、ボーカルの厚みに最も大きな影響を与える。ここは少しだけ盛ることで、歌の存在感をほどよく高められそうだ。

1kHzは、中域と高域の間くらいで、その調整の効果が人間の耳には特に大きく感じられる帯域だ。全体への影響も大きいし、特に声色や音色の明るさにも大きく影響する。この曲だとこの帯域を上げると、喉を締めずに開いて声色を明るくしたような印象になった。しかしちょっと「すかすかに抜けた」感じも出てしまうので、今回はフラットのままに。結果、中域については500Hzを少しだけ持ち上げた。

次ページ続いて高域/超高域を調整 − 高橋敦による「愛の重力」に特化したイコライザー設定が完成

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