[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第81回】音楽をもっと楽しむための“イコライザー”設定テク&解説
■PC/スマホ用アプリのグライコ、オーディオ機器のベース/トレブル機能など
まずパソコンやスマートフォンの再生アプリだが、これには前述のように「グライコ」こと「グラフィクイコライザー」が用意されている場合が多い。名前の通りに設定を「視覚的に」把握できるイコライザーだ。低音側から高音側まで順々に並んだいくつかの帯域ごとにスライダーでその増減を調整。スライダーの位置がグラフのようになるので、どんなイコライジングを行っているのかを目で把握しやすい。
ワイヤレス等のスピーカーシステムやシステムコンポ、単品本格オーディオコンポのアンプには、ベース(低音)とトレブル(高音)の「2バンドイコライザー」が搭載されている例が多い。それぞれどこかの周波数を中心(ピーク)にして低域と高域の一帯を増減させるイコライザーだ。この周波数帯域固定の2バンドイコライザーは音質をおおまかにささっと調整できて使い勝手が良い。例えば再生音量を下げなくてはならないような場合に、音量を下げることで聴こえにくくなる低域を、個別にイコライジングすることで聴こえやすくするといった使い方ができる。
上記のうち「グライコ」の一機能として提供されている場合も多いが、いわゆる「プリセット」のイコライザーというのもある。これは音楽ジャンルやユーザーの好み、利用シーンの典型を想定して、それに最適化したイコライザー設定をメーカーがあらかじめ用意して製品に組み込んでくれているもの。例えば「ボーカル」なら声の帯域(主に中高域)目立たせるために上下の帯域を抑えていたり、「クラブ」ならディープな低音を押し出していたりする。既製プリセットの利用は簡単に使えて効果がわかりやすい。その点が最大の特長だ。またユーザーが自分で作ったイコライザー設定をプリセットとして保存できるアプリや機器も多い。
オーディオ用の単体本格イコライザーもある。かつてで言えば、スライダーの数(バンド数)を増やして、より細かな周波数帯域ごとに増減を調整できるようにしたグライコ等も一般的なオーディオアイテムだった。スピーカーの癖や部屋の響きの癖の補正に活用されていたようだ。
現在においてはそれがさらに超進化し、マイクで部屋の響きを計測して、それをデジタル技術で解析して精密に補正するといったイコライザーがある。用途もサイズも価格も本連載からは遠い存在なのでここで詳しくは触れないが。
他にも、広義にはイコライザー機能に含まれるであろうものも紹介しておこう。
スマートフォンの再生アプリだと、組み合わせるイヤホンの特性に最適化したプリセットを用意している例もある。例えば「iPhone付属イヤホンの周波数特性を補正してよりフラットな再現性を持たせる」プリセット等だ。これらはイコライジングだけではなく、他の手法での補正も併用している場合がある。
ワイヤレスコンパクトスピーカーやミニコンポでの搭載例が多いのは、いわゆる低音強化機能だ。「ベース」イコライザーとは別口で両方が搭載されている例もある。そして効き具合も動作原理も通常のイコライザーとは異なる場合が多い。なので通常のイコライザーとは、使い分けや巧い併用が必要だ。
では次頁では、iTunesに用意されているシンプルな10バンドのグライコを例に、イコライザー使いこなしに挑戦してみよう!
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