[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第81回】音楽をもっと楽しむための“イコライザー”設定テク&解説
■ラックスマンに訊く!アンプに搭載されているイコライザー設計の意図は?
さて最後に、アンプメーカーのラックスマンさんにアンプに搭載されているベースとトレブルのイコライザーの設計意図や、ユーザーにどう使ってもらう想定で搭載しているのかをメールにて聞いてみた。簡単にまとめて掲載させていただく(以下、赤文字が高橋敦)。
ーー ラックスマンさんの場合、コンテンポラリーなプリメインアンプだと「BASS:±8dB at 100Hz」「TREBLE:±8dB at 10kHz」といったスペックが表記されています。これは100Hzや10kHzという周波数を山や谷の中心として、その一帯の帯域を±8dBまでの増減調整ができるということですか?
ラックスマン: その通りです。
ーー ポイントになるのはベースは100Hz、トレブルは10kHを中心という周波数帯の設定だと思います。どのような意図でそこに設定したのでしょう?
ラックスマン: 音楽そのものというより、音楽の雰囲気を変化させる周波数として選択しています。人の聴感特性を補正する手段としてのラウドネスを手動でコントロールするのにふさわしい周波数であるとも考えております。
僕の印象からも補足すると、この帯域は増減させたときの副作用が少ないと感じられるのも特長。ユーザーが「感覚的に何となく」で操作しても十分な効果を得られ、それでいて全体のバランスを崩してしまうことは少ない。
ーー 復刻色も強いシリーズの例えば「L-305」や「LX-32u」だと、「±8dB、ターンオーバー周波数切替式」「BASS : 150 / 300 / 600Hz」「TREBLE : 1.5k / 3k / 6kHz」といったスペックで、帯域が切替式になっていますね。
ラックスマン: 復刻シリーズや真空管アンプの場合、最新アンプと異なり、接続されるスピーカーの負荷や音量によって帯域バランスが大きく変化します。またユーザーの傾向として古い録音の演奏を好んでお聴きになる場合もあります。それらに応じて幅広く大胆に音質を変化する必要があると考え、切替式を採用しました。切替周波数はオクターブ単位に(周波数が倍々になるように)設定することで、特に真空管アンプで意識しやすい偶数倍音オリエンテッドな音質調節をしていただけるようにしました。
また補足。こちらのスペックの「ターンオーバー周波数」とは、イコライザーの効果が及ぶ周波数帯域の上限下限のこと。例えばターンオーバー周波数を300Hzに設定した場合、低音を持ち上げたときの山のその高音側の裾野が300Hzあたりになる。
ーー ラックスマンさんとしては、どのように使ってもらいたい、またはどのように使われることを想定して、イコライザー機能をアンプに搭載し続けてきたのでしょうか?
ラックスマン: 完全にユーザーにおまかせです。ただ、近年は回路のシンプル化とストレート志向により、トーンコントロールは触らないのが基本!という空気が主流でした。しかし、好みに合わないのにストレートにこだわって不本意な音質を我慢するのはおかしな話だとは思います。
それにラックスマン独自のLUX方式のトーンコントロールは調節レベルをフラットにしたときの周波数の暴れが少なく、音質や位相の変化を気にすることなくご使用いただくことが可能です。
搭載しているのだから当然だが、イコライザーには必要性があり、好みや場面に応じて利用してほしいという考えのようだ。
というわけで今回は「イコライザー」について解説、実践例、メーカーさんへの質問をお届けしてみた。お使いのシステムの現状の音に満足していればもちろん無理に使う必要はないが、ちょっとした不満がある場合には試してみるのもよいだろう。手持ちのアプリや機器の使っていなかった機能を改めて使うだけなので、追加投資も必要ないし。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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