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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第82回】総額70万円!超ハイエンドなポータブルオーディオシステムを組んで聴いてみた

公開日 2014/04/11 10:00 高橋敦
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■AKG「K812」¥OPEN(予想実売価格158,000円前後)

ではお安い方からチェック開始! ということで最初にチェックするのはAKG「K812」だ。安いっても約16万円ですが…。

とにかく、開放型ヘッドホンを得意とする伝統ブランドがその超ハイエンドとして開発したモデルだ。まず実物を見ての全体の印象だが、僕の趣味的には相当にかっこいい。デザインも仕上げも文句なしだ。装着感も重めの重量にしては十分に良好。

外装は金属が主でそれらの仕上げが実に良い。メッシュの向こうには何やら青く光るパーツが見える

従来の同社モニターヘッドホンから大きく変化している部分はいくつかある。それらがつまり、今後他の価格帯のモデルへの波及もあり得ると考えられる部分だ。

まずはヘッドバンドの長さ調整機構。同社といえばゴムの伸縮を利用した自動調整機構。装着すると勝手に最適に調整してくれて便利だった。しかしゴムの耐久性に不安を持つ方も多かったようだ。また実用性に問題がないとしても、これほどの超ハイエンドとは不釣り合いの感は否めない。そこでなのか、本機は新たに「クイックロック・アジャスト機能」を採用。カチカチと動く一般的な長さ調整機構だ。

アジャスト機構。裏面から見るとわかるが、シンプルにギザギザの噛み合わせでの調整&固定となっている

スタジオではひとつのヘッドホンを大勢が使い回すこともあるだろうから、自動調整は重宝するだろう。一方、我々が自宅で利用する際は、自分に合わせて一度調整すれば済むことだ。他のモデルに採用されても問題ないし、歓迎する方も多いだろう。

続いてはLEMOコネクタ。ケーブル脱着端子は従来モデルではmini XLR端子。それが本機ではLEMO社の端子に変更されている。LEMOはスイスに本拠を置く端子メーカー。「主な使用分野」の欄には、医療、原子力関連、通信・情報システム等、クリティカルな用途がずらり。高い信頼性が期待できる。実際、その抜き差しの精密さや固定の確実さは指先で感じられる。

mini XLRとの比較。LEMO端子はかなりコンパクトだ

LEMO端子は見るからに部品として高そうなので、下の価格帯での採用の可能性は、高くはないだろう。しかしハイエンド機においては「AKGのハイエンドはLEMO!」と共通化した方がわかりやすい。こちらの可能性は無きにしもあらずと思う。

LEMO端子のうちどの型番かまでは判別できないが、細身で美しい端子だ

端子のメス側(ヘッドホン側)。こちらも実に精密!

最後はハウジングの構造だ。本機の開放っぷりはかなり大胆!開放型ヘッドホンの定義としてはハウジングのドライバー背面を開放することが第一だと思うのだが、本機の場合は耳を覆う箇所までもがほぼ完全開放。音作りの面で大きなポイントになっているものと思われる。

従来のハイエンドK712 PROのハウジングを照明に透かして見たところ。というか透けてない

K812を同じく照明に透かして見るとこのように透け透け!イヤーパッドの肌触りと深さも快適!

ここまで開放すると例えば低音は出しにくくなる気がするが、聴いてもそのようには感じられない。大口径ドライバー等の他の要素とトータルでの音作りによるものだろう。そう考えると下の価格帯への導入は容易ではないとは思う。しかしこの構造自体は極端に高コストではなさそうなので、もしかしたら巧く落とし込んだ製品も出てくるかもしれない。

ポイント確認はよしとして、試聴!Mac+Audirvana Plus→USB-DAC/ヘッドホンアンプCOCERO HP→K812というシステムだ。

全体的な印象としては、まずは空間性の余裕が大きな特長だ。その点は特に音場の中央に配置されているボーカルとベースで顕著。それらの周囲に十分な余白が確保されており、それらの音が綺麗に浮かび上がっている。他の楽器の音も同傾向だ。なので低音にせよ高音にせよ帯域を強調して楽器の音像や存在感を強調する音作りは必要ない。実際に全体に実に素直で自然なバランスに整えられており、その中に全ての楽器が綺麗に浮かび上がり綺麗に響き合い、適正な存在感だ。

中島愛さん「愛の重力」は、基本ポップス、演奏フュージョン、展開プログレという面白い曲でオーディオ的な聴きどころも多い。まず印象的なのはドラムスの立体感だ。前述の「音が綺麗に浮き上がる」感じがここでも発揮されている。終盤に向けてはそのドラムスを中心に手数がこれでもかと詰め込まれる場面もあるのだが、その際にも音場内にはまだ余裕、余白を感じられ、一打一打が綺麗に抜けてくる。

主役のボーカルの表情の豊かさも余さず伝えてきてくれる。声の本体に付帯する息づかいや語尾の抜き方等の描き込みが見事。味気なく言えば高域の細部描写が優れるというようなことだが、とにかく歌のニュアンスがぞくぞくするほどに伝わってくる。特にサビでのファルセット成分を強めに入れた歌い回しはヤバい!

またボーカルの場合と同じく高域〜超高域の再現性によると思われるが、ギターの描写も素晴らしい。カッティングの無駄のないパキッとした音色もよいが、ゲインをかけて深く歪ませたギターソロが最高!ピッキングとフィンガリングで一音ごとに音色をコントロールしている様が明瞭だ。ピッキングハーモニクスで倍音成分を絶妙に混ぜてくるところなど、こちらもヤバい!

次ページ続いて約24万円のヘッドホンアンプ/USB-DAC、CHORD「Hugo」に迫る

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