HOME > レビュー > 【第82回】総額70万円!超ハイエンドなポータブルオーディオシステムを組んで聴いてみた

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第82回】総額70万円!超ハイエンドなポータブルオーディオシステムを組んで聴いてみた

公開日 2014/04/11 10:00 高橋敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■CHORD「Hugo」¥OPEN(予想実売価格240,000円前後)

テンションが上がった状態のまま、続けてはCHORD「Hugo」をチェック。独自の発想と技術でハイエンドオーディオ界で異彩を放つブランドから登場の、ポータブルヘッドホンアンプ/USB-DACだ。約24万円。

まず実物を見ての全体の印象だが、サイズ感は文庫よりは一回り小さいといった程度。ポータブルアンプとしては大きめの部類で、重さも軽量ではない。しかしポータブルの範疇には収めている。このあたりは同社の求めるクオリティとポータブル性のせめぎ合いの中でここにまとめたのかもしれない。小型化にこだわってCHORDの基準に満たないクオリティになっては意味がない。

文庫と比較。文庫の上に置くとその外周が一回り余る感じ

デザインについては、従来の同社製品ほど個性的ではないが、しかし同社らしい雰囲気を漂わす。従来的なデザインのままだとポータブル機としての持ち運びやすさに難がありそうなので、ここも妥当だ。

従来のCHORDのDACといえばこういうデザインが印象的(写真はDACのQBD76HDSD)

外観からもわかる機能面での特長としては入出力の豊富さ!USBと光デジタルとBluetoothとアナログの入力、出力も6.3mmヘッドホン出力、3.5mmステレオミニ出力、RCAライン出力が取り揃えられている。ポータブル機では採用例の少ないRCA端子を備える点は、本機が据え置き本格システムへの組み込みも想定していることの証しだ。ボリューム固定モードが用意されていることからもそれがわかる。

USBの他の入出力はこちら側にぎゅぎゅっと詰め込まれている

またUSB入力は2系統用意。片方が本機の実力を全て発揮できるメインのHD USB入力。もう片方はハイレゾに対応しないスマートフォン等との組み合わせでの安定動作に配慮したSD USB入力。

2種のUSB入力と入力切り替え、クロスフィード・フィルターの切り替え、電源スイッチ、充電端子

操作性の面では、ボリューム操作がボタンではなくホイールになっていることが特長。マウスホイールを想像してもらえればわかりやすいだろう。個人的にはボタン式よりも調整しやすいと思う。回し心地(トルク)は重めに設定されており、一気に動かすのは難しいが微妙な調整はしやすい。なお操作感はアナログだが、内部での処理は同社独自のプログラムによる高精度デジタル制御。

ボリュームのホイール。ライトアップはただの雰囲気作りではなくその色の変化で現在の音量を示してくれている

小窓から覗く内部。ここのランプもその色等で動作状況を示している

さてこのモデルの場合、今後下の価格帯への反映が期待できる、このモデルでの成果はどこになるだろうか?

…実はこのモデルこのブランドの場合、ポータブルアンプ/DACの一般論的には超ハイエンドなこの24万円のこれがブランドとしてはエントリークラス。今後これよりもお手頃な価格帯のモデルが登場するのかは微妙だ。

記事の主旨とは違ってしまうがこのモデルについては逆に、「同社の据え置きハイエンドの技術がこのモデルに落とし込まれている」と考えるのがよいだろう。既製DACチップを用いないFPGA+独自アルゴリズムによるDA変換等の同社の信念と技術が、このポータブル機にも詰め込まれている!そう考えるとあらお得!…いや24万円ですが。

音を聴いてみよう。ここではまず、Mac(再生アプリはAudirvana Plus)と組み合わせてのハイレゾも含めての再生をチェック。この組み合わせでは本機は、PCMで384kHz/32bit、DSDで2.8MHzまでの再生に対応する。ヘッドホンは引き続きK812だ。なお本機はiPhone+ハイレゾ再生アプリ(ONKYO HF Player)+カメラアダプタでのハイレゾ再生も可能。

全体的な印象としては、音色の質感の出し方と中低域の厚みの充実がポイントに思えた。そして音像をやや大柄にしてそれぞれの音の存在感を増すことも特徴。しかし緩んだ感じではなく、音が重なって窮屈で解像感が低いとかもない。良質な大柄さだ。

中島愛さん「愛の重力」ではまず、冒頭にシンセで空間の広がりを見せる場面があるのだが、そこのシンセが肉厚だ。そしてそこに続いて本編の始まりを告げるドラムスの一発も太い!そして本編に入ってもドラムスが大柄で太い!ドラマーのテクニカルさや繊細さといった要素も確保しつつだが、パワフルさの方をより際立たせる。

質感描写においては例えば、スネアドラムのバズ成分、シンバルの金属の質感のざらつきといった部分を、遠慮なくしっかり出す。本機の音調が荒いということではなく、録音に含まれているそういう成分を甘くしないということだ。クラッシュシンバルの炸裂感もほどよく派手。ギターの倍音成分も粒を粗めに描き出し、ちょっとワイルドな感じにしてくれる。それでいて雑さはなく、録音の上質さと本機の上質さを共に感じられる。

肝心のボーカルもよい具合の大柄さで、前述(K812の項参照)の表現の豊かさを特に損ねることもない。

次ページいよいよ約28万円のハイレゾDAP「AK240」

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE