EX-AR7から音の傾向はどう変わったか?
【レビュー】JVCの新ウッドコーンスピーカー「EX-HR9/HR5」をARシリーズと比較試聴
JVCから新登場のコンパクトコンポ「EX-HR」シリーズ(関連ニュース)。機能面やサイズ感、ウッドコーンスピーカーという点からわかるように、2009年発売の「EX-AR」シリーズ(関連ニュース)の後継シリーズだ。このご時世にあって、あえてBluetoothもUSB-DACも搭載しない点も特徴的だが、この点がむしろ本機の存在感を高めているとも言える。
今回は、新シリーズ最上位モデル「EX-HR9」を、旧EX-ARの店頭販売最上位モデル「EX-AR7」との比較を交えつつチェックしていこう。またEX-HR9と基本は同じくしつつ、口径が異なるエントリーモデル「EX-HR5」もチェックした。なお、残る「EX-HR7」のレビューも後日改めてお届けする予定だ。
■さらなるこだわりを投入してウッドコーンスピーカーが進化
まず最大の魅力である「ウッドコーン」スピーカーは、EX-AR7で完成させたものをベースに、チューニングをさらに突き詰めた。基本要素としては、すべての帯域をひとつのドライバーで受け持つフルレンジ構成、振動板口径は9cm、低音はバスレフで確保。
「異方性振動板」技術も継承。両モデルを見ると振動板の上に薄い木材シートが十字に貼られている。木材の「繊維の流れに沿った方向への音の伝搬速度が速い」という特性を生かし、振動板本体とは木目の流れが異なる部材を追加することで、振動板全体の伝搬速度を調整。より理想的な振動特性を得ているのだ。
他にも、磁気回路のボイスコイルボビンにも木材を採用、キャビネットはチェリー無垢材に響棒を入れ、竹の響板でも音響を調整、吸音材もメイプルのチップと、木材にこだわっての各部チューニングも継承している。
加えてEX-HR9では、磁気回路と振動板の中間部分、センターキャップ内に発生する音を処理するために、ポールピース上部へメイプルの吸音材も装着。さらに磁気回路の後部にはメイプルの大型八角形ウッドブロックを装着。こちらはその周囲での不要な高域成分を巧く処理し、低音の力強さも増す効果があるとのことだ。
このふたつの技術はARシリーズの直販限定モデル「EX-AR9」に先行して採用されており、そちらでの手応えがあっての採用と思われる。
アンプ部では、独自のデジタルアンプ技術がEX-AR7の「DEUS」から、EX-HR9では「NEW DEUS」に進化。デジタル+アナログのハイブリッドフィードバックによる広帯域再生の実現、それによるS/Nや歪み率、高域の再生特性の改善といった部分を、より高度にしている。
同じく「NEW」が付いたのが「K2」技術。非ハイレゾの音源、つまり本機の場合は主にCD再生時に、そこに含まれる情報を基に本来含まれているべき超高域やダイナミクスを推測し、補完。ハイレゾに近い感触での再生を実現する。その技術もさらに磨き上げられたわけだ。
レシーバー全体を見ると、EX-AR7では天板にウッドパネルを配して振動を制御していたところ、EX-HR9では底面にMDF材アークベースを装着して重心を下げ、さらに両サイドにもウッドパネルを装着。加えてネジ一本の素材の使い分けといったところまで含めてチューニングを詰めている。
■EX-AR7と比較試聴 − 音質傾向はどう変わった?
聴いてみると、EX-AR7で完成された基本的な音調は維持しつつ、つまりウッドコーンならではの素直な感触はそのままに、EX-HR9はより無駄を削いですっきりとした印象も兼ね備えるようになったと感じられる。
例えばドラムスの太鼓はEX-AR7の時点でも、素直な抜けっぷりが好印象だった。これがさらにEX-HR9では音色が抜けた後に音色が膨らむ感じを少し抑える、気持ちタイトな鳴り方にチューニングされているようだ。スパン!というキレが高まっている。
また、するとその中低音の膨らみや広がりが控えられた分、空間に余白が確保され、その余白を生かして、音色の響きや演奏の細部といった要素がより明瞭に伝わってくる。
そしてそうして浮かび上がってくる細部の描き込み自体にも向上が見られる。ハイハットシンバルはより薄刃に描き出されて、リズムがシャープ。女性ボーカルはより明るく通る声になる。
EX-HR5も音の方向性や後述の機能面はEX-HR9と一貫しており、違いは音質の到達度のみだ。ここは単に予算に応じて選べばよいだろう。
なおK2は随時オンオフして確認。EX-AR7はK2の効かせ具合が異なる2モードが用意されていたが、今回のEX-HR9では自然な効き方の1モードのオンオフのみにシンプル化されており、使いやすい。
音質調整周りの進化もポイントだ。EX-AR7には音質調整機能はほとんど用意されていなかった。対してEX-HR9には低音と高音それぞれ±4段階のイコライザーと低音強化機能「AHB」を搭載。リモコンにそれぞれの専用ボタンが用意されており手早く調整でき、しかも「フラット」ボタンですべての調整を一括一発解除もできる。実に使い勝手がよい。
木材を生かしたチューニングをさらに突き詰めると同時に、アンプやデジタル部分の技術の進化も盛り込み、その音質はより整えられている。だからこそ、それを土台にして、充実の音質調整機能も効果的だ。CDをシンプルなシステムでよい音で聴きたい。EX-HR9はそれに応えてくれるモデルと言える。
今回は、新シリーズ最上位モデル「EX-HR9」を、旧EX-ARの店頭販売最上位モデル「EX-AR7」との比較を交えつつチェックしていこう。またEX-HR9と基本は同じくしつつ、口径が異なるエントリーモデル「EX-HR5」もチェックした。なお、残る「EX-HR7」のレビューも後日改めてお届けする予定だ。
■さらなるこだわりを投入してウッドコーンスピーカーが進化
まず最大の魅力である「ウッドコーン」スピーカーは、EX-AR7で完成させたものをベースに、チューニングをさらに突き詰めた。基本要素としては、すべての帯域をひとつのドライバーで受け持つフルレンジ構成、振動板口径は9cm、低音はバスレフで確保。
「異方性振動板」技術も継承。両モデルを見ると振動板の上に薄い木材シートが十字に貼られている。木材の「繊維の流れに沿った方向への音の伝搬速度が速い」という特性を生かし、振動板本体とは木目の流れが異なる部材を追加することで、振動板全体の伝搬速度を調整。より理想的な振動特性を得ているのだ。
他にも、磁気回路のボイスコイルボビンにも木材を採用、キャビネットはチェリー無垢材に響棒を入れ、竹の響板でも音響を調整、吸音材もメイプルのチップと、木材にこだわっての各部チューニングも継承している。
加えてEX-HR9では、磁気回路と振動板の中間部分、センターキャップ内に発生する音を処理するために、ポールピース上部へメイプルの吸音材も装着。さらに磁気回路の後部にはメイプルの大型八角形ウッドブロックを装着。こちらはその周囲での不要な高域成分を巧く処理し、低音の力強さも増す効果があるとのことだ。
このふたつの技術はARシリーズの直販限定モデル「EX-AR9」に先行して採用されており、そちらでの手応えがあっての採用と思われる。
アンプ部では、独自のデジタルアンプ技術がEX-AR7の「DEUS」から、EX-HR9では「NEW DEUS」に進化。デジタル+アナログのハイブリッドフィードバックによる広帯域再生の実現、それによるS/Nや歪み率、高域の再生特性の改善といった部分を、より高度にしている。
同じく「NEW」が付いたのが「K2」技術。非ハイレゾの音源、つまり本機の場合は主にCD再生時に、そこに含まれる情報を基に本来含まれているべき超高域やダイナミクスを推測し、補完。ハイレゾに近い感触での再生を実現する。その技術もさらに磨き上げられたわけだ。
レシーバー全体を見ると、EX-AR7では天板にウッドパネルを配して振動を制御していたところ、EX-HR9では底面にMDF材アークベースを装着して重心を下げ、さらに両サイドにもウッドパネルを装着。加えてネジ一本の素材の使い分けといったところまで含めてチューニングを詰めている。
■EX-AR7と比較試聴 − 音質傾向はどう変わった?
聴いてみると、EX-AR7で完成された基本的な音調は維持しつつ、つまりウッドコーンならではの素直な感触はそのままに、EX-HR9はより無駄を削いですっきりとした印象も兼ね備えるようになったと感じられる。
例えばドラムスの太鼓はEX-AR7の時点でも、素直な抜けっぷりが好印象だった。これがさらにEX-HR9では音色が抜けた後に音色が膨らむ感じを少し抑える、気持ちタイトな鳴り方にチューニングされているようだ。スパン!というキレが高まっている。
また、するとその中低音の膨らみや広がりが控えられた分、空間に余白が確保され、その余白を生かして、音色の響きや演奏の細部といった要素がより明瞭に伝わってくる。
そしてそうして浮かび上がってくる細部の描き込み自体にも向上が見られる。ハイハットシンバルはより薄刃に描き出されて、リズムがシャープ。女性ボーカルはより明るく通る声になる。
EX-HR5も音の方向性や後述の機能面はEX-HR9と一貫しており、違いは音質の到達度のみだ。ここは単に予算に応じて選べばよいだろう。
なおK2は随時オンオフして確認。EX-AR7はK2の効かせ具合が異なる2モードが用意されていたが、今回のEX-HR9では自然な効き方の1モードのオンオフのみにシンプル化されており、使いやすい。
音質調整周りの進化もポイントだ。EX-AR7には音質調整機能はほとんど用意されていなかった。対してEX-HR9には低音と高音それぞれ±4段階のイコライザーと低音強化機能「AHB」を搭載。リモコンにそれぞれの専用ボタンが用意されており手早く調整でき、しかも「フラット」ボタンですべての調整を一括一発解除もできる。実に使い勝手がよい。
木材を生かしたチューニングをさらに突き詰めると同時に、アンプやデジタル部分の技術の進化も盛り込み、その音質はより整えられている。だからこそ、それを土台にして、充実の音質調整機能も効果的だ。CDをシンプルなシステムでよい音で聴きたい。EX-HR9はそれに応えてくれるモデルと言える。