IE800やHD800などの実力を改めて検証
ゼンハイザーの“超定番”ハイエンドモデルで名盤を聴く
■モニターヘッドホンの定番「HD650」
最後に、モニターヘッドホンの定番「HD650」を試聴。こちらは、解像感の高さと、素直な音色傾向が特徴。同時に、低域にしっかりした量感を持ち合わせ、演奏がとてもダイナミックに感じられる。意外に思われるかもしれないが、実はこれ、ゼンハイザー製ヘッドホンに共通するサウンドキャラクターだ。正確さだけでなく、音楽の楽しさをしっかりと伝えようとするのが、ゼンハイザーならではの魅力ともなっているのだ。
おかげで、マイルス・デイビスなどは、とても情緒的な演奏が楽しめる。基本的には正確かつバランスのよいサウンドなのだが、ピアノの音は抜けのよい、広がり感のあるサウンドに感じられ、トランペットもきらびやかさを保ちつつ、丁寧な表現を聴かせてくれる。これにグルービーなベースが加わることで、何とも勢いのある、ノリのよいサウンドが堪能できるのだ。
またリアル志向のサウンドキャラクターは、情緒的なリズムのなかに各楽器の様子がしっかりと伝わってくるため、ベートーヴェンなどのクラシックもなかなかに聴き応えがある。パフュームも、ありのままの音を素直に表現してくれるので、これはこれで悪くない。まさにモニターヘッドホンとしての理想型だ。
このように、ゼンハイザー製ヘッドホンは、マイクなどプロ用機器の製作によって裏付けされた高いクオリティを保ちつつ、同時に、ユーザーに音楽の持つ魅力をしっかりと伝えきる表現力の豊かさも持ち合わせている。こういった、聴いていて楽しいサウンドこそがゼンハイザーならではの魅力なのだ。
(野村ケンジ)