HOME > レビュー > 【第93回】いつかは買いたい? “10万円イヤホン” 4モデル一気聴き!

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第93回】いつかは買いたい? “10万円イヤホン” 4モデル一気聴き!

公開日 2014/07/25 11:34 高橋敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

・W60

W60はナチュラルにパワフルな印象だ。中低域が太く弾みがよくパワフルなのだが、ドーピング感というか不自然さはない。マッチョではなく自然に鍛えられたたくましさで、パワフルなのに聴き疲れさせない。

ベースやドラムにはその特質が最も発揮され、少しだけ緩めて太さを出した音色が楽しそうに弾み、その曲ごとのドライブやグルーヴをよい感じにちょっとだけ強調してくれる。「少しだけ」「よい感じにちょっと」というのが絶妙だ。音を詰め込んだ高密度なアレンジの曲だと太い音同士が重なって音場が飽和する瞬間もあるが、そういうアレンジの曲はそういう密度感も含めて楽しめばよいだろう。

超ハイエンドとして十分な描写力等を確保しつつも、意識して耳を向けなければそれを強くは感じさせないというのも、このイヤホンの特徴だ。音調としてはこれもややウォーム。それらの要素が聴き疲れのなさにつながっているのではないかと思う。

また、例えばドラムスに顕著だが、パワフルな音なのに同時に、半歩引いたような定位、奥行きも表現している点は見事。前に前に!の勢いだけのイヤホンではない。総じて言うとパワフルなのに「俺様スゲエッ!」的なひけらかしのない、何というか人柄のよさそうなイヤホンだ。

・Roxanne

Roxanneは空間性が突出している。イヤホンながらも奥行き(と感じられるような)表現がすばらしく、それに加えて左右の広がりもあるので、頭の中に生まれる空間に実に余裕がある。その広い空間こそがRoxanneの表現力の源だと思える。

「片側12ドライバー!」「でかい!」「カーボンの輝き!」等に圧倒されて聴き始めると、まずは意外とあっけない音におどろくかもしれない。というか僕はおどろいた。スペックや見た目のインパクトとはちがい、これでもかと圧倒する音ではなくて、自然に豊かな表現力だ。むしろバスドラム連打の低音の明瞭さやその空気感、シンバルやスネアの音の粒子が美しく薄れていく消え際の描写力といった、繊細な描写の方が際立つ。

それはなぜかと探ってみると、行き着くのが空間の広さだ。空間に余裕があるので細かな音にまで目が届く。いや逆に細かな響きまでもが描き込まれているからこその空間性なのかもしれないが、いずれにせよポイントはそこに思える。ドラムの奥行き感などアコースティックな空間性、立体感もそうだが、ディレイやコーラスといった空間系エフェクトによる、ギターの人口幻想的な立体感もすばらしい。

音調としては乾いたウォームさという独特の雰囲気。勝手なイメージだがカリフォルニアっぽい。なので例えば相対性理論「TOWN AGE」のウェットな雰囲気といったところの表現は苦手。しかし逆に言えば、曲の雰囲気やユーザーの好みとこのイヤホンの音調が合致したときには、さらに上乗せですごいことになるはずだ。

なお試聴は主にVariAble Bassノブを中央に合わせて行った。なので低域は、ここでの印象から弱めることも強めることもできる。もっと圧倒的なパワフルさを求める方にも十分に対応できる余力を残しているわけだ。

K3003についても簡単に触れておくと、「ドライバーの方式ごとに得意分野にちがいがあるなら、低域はダイナミック型にして厚みや力感を稼いで、中高域はBA型で繊細な表現力をゲットしちゃえばいいじゃん?ついでに中域と高域のドライバーも独立させちゃえばもっとよくなるよ!」という無邪気な発想を、他の多くのメーカーに先駆けて、しかもいきなり驚異の完成度で具現化してしまったのがこれだ。本当にそういう音がするし、それでいてドライバーの間の(帯域ごとの)違和感も感じられないという…。

■その他の注目点

最後に、表に挙げたところの他の注目ポイントをいくつか挙げておこう。

まずはIE 800に付属するケースの出来がよすぎる件!

天然か人工かはわからないが革系の素材で見た目も手触りも上質

ただ放り込むだけではなくてウレタンフォーム的な素材にイヤホンをはめ込み…


そしてその外周にケーブル巻いて仕上げにプラグを挿し込んでケーブル固定!

見た目に手触り、イヤホン本体をしっかり固定しての保護力、そしていちばん厄介な問題であるケーブルの処理の見事さ!最後にプラグを利用してケーブルを固定するところが秀逸だ。

もうひとつはW60のフェイスプレート交換機構。ハウジングの半分ほどを覆っているアルミ製のフェイスプレートが交換可能となっており、ガンメタリックシルバー、レッド、ゴールドが付属している。

付属のドライバーで一カ所のねじ止めを外すと…

このようにフェイスプレートを外すことができる


この3色から選んで装着

左右をちがう色にすると左右の区別もつきやすい。ってAV Watchの記事に書いてあった。何かかっこいいし僕もおすすめ

…というわけで、今回は10万円クラスの超ハイエンドイヤホンの近年発売4モデル(+殿堂入り1モデル)を紹介させていただいた。もうどれもやっぱりすばらしかったし、その上での個性も確認できた。10万イヤホンは個性あふれる製品からよりどりみどりだ!…我々のお財布に10万円があればだが。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域 バックナンバーはこちら

前へ 1 2 3 4 5 6 7

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE