[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第94回】俺はいま…4Kを超える! 5K=5,000円前後イヤホン7機種一気聴き!
■TDK「TH-PVEC600WH」(実売目安:5,530円)
ボーカル特化?実はオールラウンダー
前述のマクセルと同じく、録音録画メディアの分野で確固たる地位を維持しつつ、再生機器の分野にも進出してきたブランド。イヤホン分野では普通にコスパの高いモデルを揃えつつ、マグネチック・アーマチュア型ドライバーやらダイナミック型デュアルドライバーやら、挑戦的な製品もちょくちょく放り込んでくる。
この「TH-PVEC600WH」の場合は、共振しにくいセラミック筐体に6.0mmと小口径なダイナミック型ドライバーを搭載というのが特長。小口径ドライバー搭載機ではいくつか見かける手法だが、その小ささを生かしてドライバーをより前方に搭載、耳の奥、鼓膜に近い位置から音を届けることでの音質向上もポイント。
しかしこのモデルのさらに大きな要注目ポイントは、見た目的にはただの色違いにしか見えない兄弟モデル「TH-PMEC600BK」の存在だ。それぞれが「TH-PVEC600WH Vocal tuning」「TH-PMEC600BK Megabass tuning」と銘打たれており、基本を同じくしながらもチューニング(音作り)が異なる。ひとつのモデルですべてのニーズを満たそうとはしないことで、それぞれのモデルの音作りはやりやすくなったのではないだろうか。
ここでこの「TH-PVEC600WH Vocal tuning」の方を特におすすめするのは、こちらは「Vocal tuning」とボーカル特化型のような名前になっているものの、実際には「バランス型」「万能型」と表現した方が適当な素直さを持っているから。売り文句の「繊細で芳醇な中低域を奏でる」は別にボーカルに限らず、全体の表現力の向上に寄与している。それにバランスも素直なのでどの楽器も平等に聴こえてくる。ボーカルも含めて、少し硬めで細身のシャープさ、音色の鈴鳴りも好感触。細身で深く射し込める筐体のおかげで遮音性も良好で、総合力の高いモデルだ。
■AKG「K323XS」(実売目安:5,530円)
伝統ブランドから登場のイマドキイヤホン
こちらも小口径ダイナミック型ドライバー&コンパクト筐体なモデル。今回紹介する中にそのタイプが多いのは、僕が個人的にそのタイプを好きだということもあるが、そのタイプが実際に増えているということでもある。それなりに好評なのではないだろうか。
口径は5.8mmで、小口径ドライバーとしてはこのあたりが多いなというあたりのサイズ。メーカー曰く「素早く振幅する小口径ドライバーによるスピード感のある中低域、クリアな高音域」は、まさに小口径ダイナミック型の強みを端的に言い表している。
またその小ささ、重量わずか1g、XSサイズイヤーピース付属、グリーン、イエロー、レッド、ブルーのカラー展開といったところは、女性ユーザーへのアピールも狙っている感じだ。なおマイク付きリモコン搭載タイプとして写真のブラックとあとホワイトも用意されている。
音の方は今回ピックアップした他の小口径ダイナミック型ドライバー搭載機にくらべると、低音のボリューム感も少し加えてある印象だ。といっても無理のある強調ではなく、他の小口径モデルとくらべれば少し膨らませた感じといった程度。このくらいの低音があった方がいい感じだという方も多いだろう。高域は少しざっくりとしたシャープさで、ロックの迫力あるシンバルワークのほかにも、例えばPerfumeのエレクトロなエッジ感の表現とも相性がよい。伝統あるブランドの製品だが、見た目にも音にもほどよい「イマドキ」感がある。