バランス接続にも対応などこだわり満載
「ソニーの本気」の実力とは? 新最上位ヘッドホン「MDR-Z7」/イヤホン「XBA-Z5」など速攻レビュー
■ハイレゾサウンドが進化した新型機「MDR-1A」
最後にMDR-1シリーズの新型機「MDR-1A」だが、ユニットが刷新されアルミコート仕様となり再生帯域も100kHzへ到達している。普遍的なヘッドホンの姿を目指して開発されたMDR-1シリーズだけに、フォルムはほぼそのまま踏襲し、ブラックモデルのプロット塗装仕上げやイヤーパッドの変更、独立グランド着脱ケーブルによるバランス駆動対応など、ハイレゾサウンドが進化した現段階に適した仕様へとブラッシュアップされた。
サウンド面では「MDR-1R」に比べ中高域がすっきりと感じられ、より音像のフォーカスが引き締まった印象だ。低域も深く沈みこみ、豊かに響くが、上位機の良い部分を継承し、余韻表現の巧みな空間再生能力を見せ付けてくれる。「MDR-Z7」が音場重視傾向だとすれば、こちらはモニターライクな音像重視といった違いがあるが、輪郭がきつくなるようなことはなく「MDR-1R」譲りの密度感ある音像表現の延長線上にあるサウンドとなっていると感じた。
USB-DACやS-Master HXを内蔵した「MDR-1ADAC」の存在も非常にユニークで、デジタルアンプならではの澄んだサウンドと新型ドライバーに最適化されたバランス良い音色が絶妙にマッチしている。こちらはアナログ接続時のバランス駆動に対応できないということだが、192kHz/24bit・PCMから5.6MHz・DSD(192kHz・PCM変換再生)までのハイレゾファイルをPCと本機のみでダイレクトに味わえるメリットは、ネットオーディオ初心者にとっても非常に魅力的に映ることだろう。
MDR-1ADACの音を確認してみると、ハイレゾのS/N高く分離良いサウンドもナチュラルに聴かせ、変換再生となるDSDファイルも豊かな空間性を素直に聴かせてくれる、オールインワンスタイルとして理想的なプロダクトに仕上げられている。
駆け足ではあるが、各モデルの持つ魅力を少しでも感じていただけたであろうか。筆者自身もこれから時間をかけてそれぞれのモデルをじっくりと聴いてみたいと思うが、ついにソニーもバランス駆動対応へと動いたこの秋の動きが、果たしてライバル他社にどう影響を与えるのか。今後の市場の動きもとても楽しみである。
(岩井喬)