[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第101回】“当世ポタアン事情” <前編> ポタアンって何? 基礎知識を総まとめ
■基本的なタイプ分け
一口にポタアンと言っても様々なタイプがある。全てを網羅することは難しいが、ここでは便宜上、代表的なところをざっくりと分類してみよう。
▼多機能多用途スタンダードタイプ
サイズ感は縦横はスマートフォンと同程度で厚みは倍程度といったところ。アナログ入力の他にUSB-DACとしての入力も備え、ポータブルの他に自宅ではパソコンと組み合わせてのハイレゾ再生にも利用できる。USB-DAC入力がスマートフォンとの接続、さらにはハイレゾ再生にまで対応する製品もある。
…というのが、いま現在のポタアンとしていちばん「よくある」「スタンダード」なタイプではないかと思う。代表的な製品は…たくさんだ。とりあえず国内大手メーカーの新しめの製品を挙げておく。
▼リモコンタイプ
製品数としては多くはないのだが、これはこれで利点もあるし需要もあるのだろう、というのがリモコン型。ポタアンとしては超小型で背面にクリップを装備してカバンのベルトや胸ポケット等にちょこんと固定できたりする。スマートフォンとの接続はデジタル方式を採用している場合が多く、そこは音質面でも優位だ。
そしてスマートフォンの音楽再生のリモコン機能を備えていることもポイント。実はポタアンの多くは、アナログ接続にせよデジタル接続にせよ、スマートフォン用リモコン搭載イヤホン&ヘッドホンのリモコン信号をパススルーできずにリモコン機能は使えなくなってしまうのだ。しかしポタアン側にリモコン機能が搭載されていれば、その点の使い勝手をある程度は維持できる。このタイプには、例えば以下のような製品がある。
▼アナログタイプ
デジタル入力を備えることは現在のポタアンでは普通のことになっているが、しかしあえてアナログ入力に絞っている製品もある。もちろんそうなると利用範囲は狭まるのだが、利点もある。
ひとつは単に「使わない機能は搭載されていない方がよい」ということ。例えば利用しているスマートフォンがデジタル接続に対応しておらず、自宅でパソコンと接続するつもりもないのであれば、デジタル接続機能は不要だ。するとそのユーザーにとってデジタル接続対応ポタアンは、不要な機能にコストが投じられていてコストパフォーマンスが低い製品ということになる。実際には常にそうだというわけではないが、同価格帯ならアナログ専用ポタアンの方がアナログ入力時のクオリティは高いと期待するのは、普通の考えだろう。
もうひとつは「アナログアンプはすぐに陳腐化することはない」ということ。デジタル技術は日進月歩だ。古い製品の古い技術は音質が悪いなんてことはないが、「新しいもの好きとして最新製品を購入したのに一年後にはスペック的に…」みたいなことは多々ある。一方アナログアンプはおおよそ「枯れた技術」であり、いまの時点で納得できるものを選んでおけば、近年すぐにそれが陳腐化するということはあまりない。デジタルの部分はポータブルプレーヤーの側に任せてポタアンは「気に入ったよいものを長く使いたい」みたいな考えの方なら、アナログアンプも悪くない選択だ。
またそこを突き詰めると「真空管搭載」なんてのはアナログの極みであり、特に面白いかもしれない。アナログオンリーかつ真空管搭載な製品例を挙げておこう。
▼規格外
バッテリー内蔵でポータブルといえばポータブルなのだが、スペック的にもサイズ的にももはやポータブルがどうこうとかいう問題ではないという、超弩級ポタアン(?)も存在する。実際にポータブルとして活用しているユーザーの方もいるが個人的には、「自宅でパソコンと組み合わせつつ、もしも時には必要とあらばポータブルとしても使える」みたいな感じに理解しておくとよいかと思う。代表的な製品としては…
さて、便宜上の基本的でざっくりなタイプ分けを終えたところで、続いてはスペックや機能の“ポイント”を押さえていこう。