アンプの地力からDolby Atmos再生まで徹底チェック
デノンのDolby Atmos対応AVアンプ「AVR-X4100W」を大橋伸太郎がレビュー
音場補正機能「Audyssey Multi EQ」を搭載、当然、Dolby Atmosホーム用に機能強化されている。AudysseyはDSPにインストールされるので他社製品でDolby Atmosに対応するために外されるケースが見られるが、デノンはDSPに余裕があるため継続して搭載。他にHDMIver.2.0に対応し4K60p/4:4:4出力に対応する。
■デノンのAVアンプだからこそ可能な高密度な音場再現
試聴は川崎市のディーアンドエムホールディングス本社のデノン試聴室と本誌試聴室の2カ所で行った。筆者が内心危惧したのは、Dolby Atmosに対応しDSPの搭載数を倍増させ、Audysseyを廃止せず価格据え置きとした結果、合理化でアンプとしての地力が後退したのではないか、ということだった。再生するフォーマットがドルデジだろうがアトモスだろうが、最終的な表現はアンプのドライブ能力如何である。
川崎での試聴開始の際に懸念を正直にぶつけてみると、開発担当者から「AVR-X4000に対してトレードオフのクオリティダウンはありません。パワーアンプ初段はデュアルトランジスタ構成で低域を強化し、脚部にいいものを使いましたので、音質はむしろ向上しています」という答えが返ってきた。まずDolby Atmosのサラウンドプロセッサーを使わず、従来のチャンネルベースでの再生を行ってみよう。
最初に再生したのが米特殊部隊のアフガニスタンでの「レッドウィング作戦」の顛末を描いた戦争アクション『ローン・サバイバー』(Dolby TrueHDアドバンスド96kアップサンプリング)。試聴箇所は後半の米軍救出部隊とタリバンの交戦シーンで、音場内に音がひしめき合う密度感がある。着弾音に体を掠めただけで火傷しそうな熱さがある。これぞ、デノンの音。表現が太く芯を感じさせ、剛直な切れ味と温度感がある。パイオニアやオンキヨーのAVアンプが再生空間を外向的に拡張していくのに対し、デノンのサラウンドアンプは音場の密度が高い。一音一音に実在感があり、音場をぎっしり埋めて行く。その結果、音場空間の気圧が高まりリスニングポジションに立ち向かってくる迫力が生まれる。音場浸透力が高いといっていい。
デノンファンが常に期待するものがまさにそれで、AVR-X4100WもデノンのAVアンプらしさが横溢している。懸念は杞憂だった。次に聴いたのが1993年の名作『ピアノ・レッスン』(DTS-HDマスターオーディオ96kHz)。前半のハイライトのエイダが海岸でピアノを弾くシーンは、マイケル・ナイマンの有名な旋律がセンターチャンネルから再生される。L/Rからはオケと潮騒、風音が薄く鳴るだけ。ピアノがエイダの分身であり心の声である象徴的表現だが、センターチャンネルが一身に担うものが大きく、アンプの地力が問われる。ここでもAVR-X4100は96kHzで歪みが消えた音声を余裕あるアナログ部のパワーによって伸び伸びと音場(映像の中の虚空)に解き放ち、映画のテーマである「情念と官能の解放」を哀切な叙情で歌い上げる。
■デノンのAVアンプだからこそ可能な高密度な音場再現
試聴は川崎市のディーアンドエムホールディングス本社のデノン試聴室と本誌試聴室の2カ所で行った。筆者が内心危惧したのは、Dolby Atmosに対応しDSPの搭載数を倍増させ、Audysseyを廃止せず価格据え置きとした結果、合理化でアンプとしての地力が後退したのではないか、ということだった。再生するフォーマットがドルデジだろうがアトモスだろうが、最終的な表現はアンプのドライブ能力如何である。
川崎での試聴開始の際に懸念を正直にぶつけてみると、開発担当者から「AVR-X4000に対してトレードオフのクオリティダウンはありません。パワーアンプ初段はデュアルトランジスタ構成で低域を強化し、脚部にいいものを使いましたので、音質はむしろ向上しています」という答えが返ってきた。まずDolby Atmosのサラウンドプロセッサーを使わず、従来のチャンネルベースでの再生を行ってみよう。
最初に再生したのが米特殊部隊のアフガニスタンでの「レッドウィング作戦」の顛末を描いた戦争アクション『ローン・サバイバー』(Dolby TrueHDアドバンスド96kアップサンプリング)。試聴箇所は後半の米軍救出部隊とタリバンの交戦シーンで、音場内に音がひしめき合う密度感がある。着弾音に体を掠めただけで火傷しそうな熱さがある。これぞ、デノンの音。表現が太く芯を感じさせ、剛直な切れ味と温度感がある。パイオニアやオンキヨーのAVアンプが再生空間を外向的に拡張していくのに対し、デノンのサラウンドアンプは音場の密度が高い。一音一音に実在感があり、音場をぎっしり埋めて行く。その結果、音場空間の気圧が高まりリスニングポジションに立ち向かってくる迫力が生まれる。音場浸透力が高いといっていい。
デノンファンが常に期待するものがまさにそれで、AVR-X4100WもデノンのAVアンプらしさが横溢している。懸念は杞憂だった。次に聴いたのが1993年の名作『ピアノ・レッスン』(DTS-HDマスターオーディオ96kHz)。前半のハイライトのエイダが海岸でピアノを弾くシーンは、マイケル・ナイマンの有名な旋律がセンターチャンネルから再生される。L/Rからはオケと潮騒、風音が薄く鳴るだけ。ピアノがエイダの分身であり心の声である象徴的表現だが、センターチャンネルが一身に担うものが大きく、アンプの地力が問われる。ここでもAVR-X4100は96kHzで歪みが消えた音声を余裕あるアナログ部のパワーによって伸び伸びと音場(映像の中の虚空)に解き放ち、映画のテーマである「情念と官能の解放」を哀切な叙情で歌い上げる。