[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第103回】「秋のヘッドフォン祭2014」を高橋敦の“超”個人的ベスト5で振り返る
【第4位】イヤホン筐体の成形技術
個々の製品としても流れとしても気に留まったのは、イヤホンのハウジング(シェル)の成形技術。
まずひとつめはFitEarのカスタムイヤーモニターの新作「FitEar 彩(Aya)」。このモデルのシェルは3Dプリンターによって成形されているとのことだ。
従来のカスタムイヤーモニターでは樹脂を化学反応によって硬化させていたのだが、複雑な形状のイヤモニではシェルの部位によってその硬化速度に誤差が生まれ、それが製造の均質さや安定性に影響していたとのこと。一方3Dプリンターの場合はそういった問題が起きないため、従来の製造手法よりも高い品質を安定して実現できると共に、従来の手法では難しかったより複雑な形状も実現できるそうだ。
続いてはfinal audio designの「heaven VII」「heaven VIII」と、RHAの「T10」「T10i」(iはリモコン付きモデル)。これらのハウジングは金属粉末射出成型(メタルインジェクションモールド)で製作されている。
金属粉末射出成型というのは、金型に金属粉末と結合材を配合したものを射出成型し、それで形を作ったものを超高温(1,300度で10時間とかそういうレベル)で処理することで完成させるもの。現在の射出成型技術をもってすれば、鋳造や切削では難しいような複雑な形状も実現可能。そして完成品の均質性(密度の安定など)にも利点があるようだ。
どちらの製作手法にも共通して言える利点は、それらを採用することで形状(音響と外観)の設計の自由度と生産の均質性を共に高めることができるというところだろう。従来は前者にこだわると後者が難しくなったりしがちだったと思うのだが、そこを突破するためのアプローチというわけだ。
【番外編】
さてベスト3の前に一休みして、個人的な興味というよりは実用性の観点から紹介しておきたいアイテム。JayBirdのBluetoothイヤホン「JayBird BlueBuds X Bluetooth」に登場した新色「CAMO」だ。
この新色の最大の特徴は「都市型迷彩」であることだ。既存のカモフラージュ柄アイテムの多くは森林等の環境を想定したグリーンとやブラウン、カーキなどをベースにした迷彩を採用している。
しかし考えてみてほしい。音楽用のイヤホンやヘッドホンの多くはそういった環境で用いられることはない。その多くは都市部で利用されるのだ。都市部では森林迷彩は迷彩どころか逆に目立つ。そこでこの都市迷彩だ。グレーをベースにしたこの配色は都市部でこそ目立たない。イヤホンの利用シーン、現実に即した迷彩と言えるだろう。アーバンスナイパー諸氏にはぜひおすすめしたいイヤホンだ。
…冗談はさておき、森林迷彩ほどアーミーっぽくもなく耳元で目立ちすぎずにほどよく主張する、面白いカラーだ(とフォローしておく)。