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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第104回】地味にもほどがある企画!高橋敦が解説する “ボリューム” 大全

公開日 2014/10/31 12:03 高橋敦
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■ボリュームとは 

この「ボリューム」という言葉には様々な捉え方があると思うのだが、この記事においては特に注釈がない限り「オーディオシステムにおける再生音量調整機能およびそれを実現する回路等の全般」くらいの幅広い意味と受け取ってほしい。その目的は前述のように、様々である「適当な音量」を自由に得られるようにすることだ。

…と、まずは小難しい言い方をしてみたが、要はオーディオ機器において普通に「ボリューム」と呼ばれている機能や回路のことだと考えてもらって問題ない。例えば、

●ポータブルプレイヤーのボリューム設定
●アンプのボリュームボタンまたはノブ
●アンプ内蔵スピーカーのボリュームボタンまたはノブ
●ヘッドホンアンプのボリュームボタンまたはノブ
●再生アプリのボリューム設定


これら全てが今回扱う「ボリューム」だ。

OPPOのヘッドホンアンプ「HA-1」のこれぞボリュームという感じのボリュームノブ

Apple「iPhone 5」のこの精密感のある+ーのボリュームボタンも印象的


スマートフォンやDAPの場合はボタンの他に、ディスプレイに表示されるスライダー等のタッチ操作でもボリュームを動かせる

■ボリューム調整の仕組み 

ボリュームによる音量調整はどのような仕組みで行われているのか。いくつかの観点から分類して紹介してみよう。まず、

●アナログ
●デジタル


に分けて考えることができる。アナログでの音量調整は例えば、アナログアンプではアンプの信号増幅率自体を増減させることでも可能だし、増幅した音声信号をヘッドホンやスピーカーに出力する手前で抵抗器を通して減衰させることでも可能だ。

デジタルでの音量調整は例えば、アンプよりも前のアナログ信号に変換される前のデジタルデータの時点で音量のデータを増減させるといったことだ。DACチップに搭載されていたり、PCやポータブルプレーヤーのシステムや再生アプリに用意されている音量調整機能はおおよそこちらと考えてよいだろう。

それぞれの長所短所についてだが、おおまかには、「上質なアナログボリュームは一般的なデジタルボリュームに音質面で勝る。しかし上質なアナログボリュームは高価で大きなものになる」という理解でよいだろう。つまり例えば「ハイエンド据え置き機器なら豪勢なアナログが優位な場合が多いが、ポータブルなど小型で安価な機器である程度のクオリティを確保するにはデジタルの方が優位」みたいな感じだ。

続いては、いまアナログでの音量調整のところで出た話題を掘り下げてみよう。

●アクティブ
●パッシブ


例えばアンプ=増幅回路の増幅率自体を増減させることで、そこから出力される音声信号の大きさ=音量を調整するのは、電気回路的にいわゆる「アクティブ」回路を使った手法と言える。対して、最終段で抵抗器を通すことで信号を減衰させるのは「パッシブ」な回路であり手法だ。

どちらにしても「ポテンショメーター(可変抵抗器)」を使い、ユーザーはそれを回すことで実際の調整を行うスタイルが多い。アンプのボリュームノブやポタアンのダイヤルはポテンショメーターを動かしている場合が多いのだ。なお「ポテンショメーター」の略称は「ポット」。

ポットの一例。この形状のものはシャフト(棒)の部分をアンプ等の筐体から突出させ、そこに被せたノブをユーザーが操作するという形で搭載されることが多い

ポテンショメーターの他には「アッテネーター」もある。こちらも可変抵抗器の一種だが、ポテンショメーターは無段階で動作しその抵抗値を段階的ではなく連続的に変化させられるのに対して、アッテネーターは内部に多数搭載した値の異なる固定抵抗をカチカチと切り替えて接続することで抵抗値を段階的に変化させるロータリースイッチだ。音量変化の滑らかさにおいても小型化においてもポテンショメーターの方が有利なのだが、音質面ではこちらのアッテネーターが優位とする意見が多い。

さてここまでに挙げた例を受けて、より複雑な例も見てみよう。

●アナログボリュームをデジタル等で制御

というパターンもある。アナログ領域での音量調整はアクティブにせよパッシブにせよ、回路のどこかの部分の抵抗値を変化させることで行われる。そのために前述のようにポテンショメーターやアッテネーターといった、抵抗値を変化させられる可変抵抗器を利用している。その可変抵抗器をノブやダイヤルなどでユーザーが直接動かし、適当な音量を得るのだ(リモコン操作対応の場合は電動で回転動作させたりする)。

しかし対して「アナログの可変抵抗器をデジタル等で制御する」という手法もある。アッテネーター(段階式切替抵抗)のその切替制御を、物理的に動かすのではなく、デジタル制御を含め電子的な処理で行うといったやり方だ。といっても一般的なアッテネーターをそのまま使うのではなく、それと同様に機能する構造をチップとして高度に小型集積化したものを使う。この方式の利点は、音質面でアナログの強みを生かしつつ、小型化や制御の正確さにおいてはデジタルに近い強みも兼ね備えるところと言えるだろう。

次ページ次は、ボリュームに伴う問題について切り込む

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