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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第104回】地味にもほどがある企画!高橋敦が解説する “ボリューム” 大全

公開日 2014/10/31 12:03 高橋敦
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■ボリューム調整に伴う問題:デジタル編

ではデジタル領域での音量調整なら問題はないのかというと、こちらにも弱点はある。

デジタル音声データにおいて音量の情報はビット深度という要素として記録されている。CDの44.1kHz/16bitやハイレゾの96kHz/24bitとかの16bitや24bitという値は、音量についてのデータの幅広さと緻密さを示しているのだ。もちろんビット深度が深い(大きい)ほど音量情報はより幅広く緻密。より小さな音から大きな音までの抑揚をより細やかに記録して再現できる。オーディオの言葉で言えばダイナミックレンジが広くダイナミクスが細やかなのだ。

しかしデジタル領域での音量調整というのは、表現はやや不正確になるがその動作を簡略化して表現すると、「音量情報のビットの下位を切り捨ててデータ全体を下にシフトすることで音量を下げる」ような処理だ。そのため全体の情報量が低下する。以下に例を挙げるが、数字の内容やそれが正確に意味するところはあまり気にしないで、何となく受け取ってもらえればOK。

1bitはおおよそ6dBという音量の幅を表すことができる。逆に言えばデジタル領域で音量を6dB下げると1bitの情報量が失われているのだ。CDフォーマットの16bitというビット深度は16bit×6dB=96dBのダイナミックレンジを持っている(より厳密な計算式は「◯bit×6.02dB+1.76」だがここでは簡略化した式と数値で話を進める)。これは人間の聴覚が対応できるダイナミックレンジを、幅としてはおおよそ完全にカバーしていると考えてよいと言われる(幅ではなく緻密さとなるとまた話は違うのだろう)。

しかしここでデジタル領域での大幅なボリューム調整が行われると、そのダイナミックレンジの幅は、例えば24dB下げればマイナス4bitで12bit程度に落ち込む。こうなってくるとその影響が懸念される。これが俗に「ビット落ち」と呼ばれる現象、問題だ。再生音量を下げた状態では人間の聴覚が感知できるダイナミクスも荒くなるのでさほど気にはならないだろうとも考えられるが、まあ回避できることなら回避したい要素ではある。

そこでその回避手段となるのが、音量調整を24bitや32bitで行うことだ。元が16bitの音声データでもそれをまず24bitや32bitに拡張変換してから音量調整を行うことで、ビット落ち自体は回避できないのだが「元々のダイナミックレンジに余裕があるのでビット落ちしてもあんまり問題ない」という状況を作り出すことができる。

極端な話、24bitのデータは144dBのダイナミックレンジを持っているので、そこから音量調整で48dB=8bitのビット落ちが発生したとしても、まだ96dB=16bit、CDと同等のダイナミックレンジが確保されている。ハイレゾの24bit音源をさらに32bitに拡張して処理する場合も同じ話だ。

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