[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第108回】あのメガドラが現代に蘇る?「メガドラアンプ」キットの謎サウンドに驚愕!
■ほとばしる80年代感、お前これ何回ダビングしたんだよ感
こ…これは…100メガショック!!いやそれは違うハードなのだがしかしこれは100メガショックと言わざるを得ない。いやいまどき100メガではショックでもないから100テラショック!!と叫び直しておこう。
そしてぶっちゃけ、これはアンプであると同時にエフェクター、つまり意図的に大幅に音を変化させる機器というレベルだ。使用チップが何とかいうことだけでこの音が作れるとは考えにくい。回路全体でこの音にするべくエフェクトしていると考えたほうがよいだろう。
まず無音時に盛大だったサーッというホワイトノイズが音楽再生が始まっても音楽本体に負けじと存在感を主張!これはいい!ノイズの音調が甘いので耳障りではなく、ラジオの背景ノイズのような心地よさだ。そういうのに慣れてない人には単に雑音だとは思うのだが、しかし僕としてはよい!
そしてそこからさらにほとばしる80年代感ッ!お前これ何回ダビングしたんだよ感ッ!ナロウレンジ!モコモコ!もったりあんぜりか! すごく大げさに好意的に表現すれば、楽器の世界ではデジタルサンプリングではなくアナログバケツリレー素子を使用したアナログディレイ(エコーエフェクト)を好む方も多いが、ああいうように心地よく柔らかなローファイ感、暖かさだ。「BOSS DM-2」を好むような方ならぴんとくるだろう。
完全に意図的と思われる発音と録音で言葉を刺してくる坂本真綾さん「30minutes night flight」、その点をさらに強めるUERMでさえも、惜しくも終了となる「アニスパ!」でのドS姉さんっぷりがアレな真綾さんの全力の刺しでさえも、このメガドラアンプを通して刺すことは不可能ッ!柔らかく優しい真綾さんがそこにいる。
喜多村英梨さん「掌 -show-」はプログレッシブメタル的なサウンドのポップス。エッジの強いギターを中心に高密度な演奏と録音で情報量が異様に多いのだが…
…その情報量を黙殺ッ!渾・然・一・体ッ!このなじみっぷり!驚異のコミュ力! そしてさらに、実際のところはわからないがこの曲のギターは例えばPRS(というギターブランド)を想像させるように現代的な抜けや厚みの音色なのだが、しかしメガドラアンプを通すとそれがギブソンのSG(というモデル)のように曖昧な何かを醸し出すものに変貌する。SGとはブラック・サバスのトニー・アイオミ氏が愛用し続けているギターだ。
それを筆頭に2014年なはずのこの音源が1970年の黒い安息日に憑依される!音色というか音質は1970年代なのに曲や演奏は最新という異世界!1970年ではキタエリさんのような美しく凛とした女性ボーカルがメタルを歌うことはないし、そもそもメタルはサバス以降に確立したものだ(と僕は考えている)。2010年代の音楽を1980年代のチップで増幅したら結果1970年代の感触になっているという謎空間!共存し得ないはずの音の融合!メガドラ・メタル・メガドラ!
さてせっかくだからずばりレトロゲームミュージックとかも聴いてみたりするべきなのだろうが、僕はメガドラやその他レトロゲームのサントラなんて気の利いた音楽は持っていない。なので手持ちの中からここはいわゆる「チップチューン」、その往年のゲーム機の内蔵音源の音色や制限を再現する手法を用いた音楽を聴いてみる。YMCKのアルバム「ファミリーミュージック」だ。YMCKは任天堂系かなと思うのだが、そこは目をつぶっていただければと思う。
…違和感がなさすぎる。むしろこれが正解で僕は今日までまちがったYMCKを聴いていたのかもしれない…そういう感じだ。これはというかこれもだが文句なし。
しかし実はさらに!このメガドラアンプには隠された能力、覚醒の「通常モード」も用意されているのだ!…いやオプションモードが「通常」なのかよ!?