【特別企画】デノン「PMA-50」への採用でも注目
英CSRが開発、ハイレゾ時代のデジタルアンプ技術「DDFA」。その実力を山之内 正が検証
■低音やS/Nの良さといったDDFAの特質がPMA-50にも現れている
デノンのPMA-50の筐体はCSRの試作機よりもさらにコンパクトだが、その再生音は溌剌とした活発さにあふれ、サイズから連想するよりもはるかに力強く量感豊かな低音を引き出してくる。
パソコンで再生したハイレゾ音源のなかでは、ボーカルやピアノの鮮度の高さが際立つ一方、オーケストラやオルガンなど低音に強いエネルギーを含む音源で音が痩せないことにも感心させられた。その低音は消えるときにも余分な音を引きずらないので、リズムのキレが良く、ベースの動きが鮮明に浮かび上がる。反応の良い低音はCSRの試作アンプでも聴き取ることができたので、DDFAにそなわる資質とみていいだろう。
PMA-50で再生したDSD音源は無音時の静寂の深さが印象的で、S/Nの良さが際立っている。音が鳴っていないときだけでなく、楽器の音にも余分な付帯音が乗らず、音が消えていくときの余韻にもくもりがない。PMA-50が躍動感豊かな音楽を伝える背景には、その静寂感があるのだ。
ハイレゾ時代に求められるアンプの資質とは何か。DDFAの再生音から、その疑問への答えに通じるヒントを聴き取ることができる。PMA-50のようなコンパクトなアンプから力強い音を引き出すことは、アナログアンプの技術だけではきわめて難しい。一方、従来型のデジタルアンプを導入すれば小さな筐体から大出力を引き出すことはできるが、繊細で鮮度の高いハイレゾ音源の真価を引き出すのは簡単ではない。
そのジレンマを克服するためには、デジタルアンプの技術をさらに洗練させ、アンプの基本性能を高める必要がある。そのポテンシャルを秘めた技術としてDDFAへの注目は今後さらに高まることになるだろう。エントリークラスから高級機までさまざまなカテゴリーの製品に採用が広がることを期待したい。
(山之内 正)