FLAC再生もサポート
【レビュー】実はハイレゾ再生も可能、iPhone向け外部メモリー「iXpand」が便利
■ハイレゾ音源を気軽に外へ、ワイヤレススピーカーでも楽しめる
では、実際のところiXpand/iXpand Syncの使い勝手はどうなのか。Phile-webという媒体の性格を考慮し、オーディオファイルの扱いを中心にレビューしてみよう。
扱いはすこぶる簡単。iOSデバイスにLightningコネクタを差し込めば認識され、アプリ(iXpand Sync)を起動するか無視するか確認のダイアログが現れる。ロック状態でも通知されるので、いきなり差し込めばOK。使い終えるときも、アンマウント処理などなしに引き抜くだけでいい。
早速オーディオファイルをいくつか再生してみた。AACやMP3といったロッシーな音源はもちろん、ロスレスのALAC(44.1kHz/16bit)とFLAC(192kHz/24bit)、WAV(88.2kHz/24bit)も滞りなく再生できた。Lightningポートが塞がっているためデジタル出力は不可、iOSデバイスの仕様上ステレオミニジャックのアナログ出力も48kHz/16bitに丸められてしまうが、輪郭のはっきりとした鮮烈な音を楽しめる。なお、DSDの再生には対応しない。
プレーヤーとしての音質だが、ALACやAACといったiOSのフレームワークで再生しているフォーマットについては、iOS標準装備の『ミュージック』と同等と考えていい。しかし、ハイレゾ音源(FLACとWAV)は、48kHz/16bitに丸められるにしても、VLCという実績あるフレームワークを使用していることもあり、安定して再生され品質は高い。Bluetooth/AirPlayスピーカーに出力できることもうれしい。PCからコピーしたハイレゾ音源を気軽に試聴する、というニーズは十分満たしてくれるはずだ。
ただし、FLACやOGGなどiOSでサポートしないフォーマットは、CPUパワーを必要とするソフトウェアデコードとなるため、バッテリーがみるみる減少する。オーディオファイルはまだしも、WMVやFLVなどのビデオファイルはバッテリー対策が必須となるだろう。
オーディオ再生用補助メモリとしての可能性だが、個人的には「大いにあり」と考える。PCに保存している音源を外へ持ち出す場合、ハイレゾか否かを問わず、とりあえずiXpandにコピーしておけば再生できる。ヘッドホンにかぎらず、Bluetooth/AirPlayスピーカーで聴くことも容易だ。バックグラウンド再生に対応しない(他のアプリを使いながら再生できない)、FLACに埋め込まれたメタデータを解釈しないなど気になる点もあるが、ハイレゾ音源をiPhone/iPadで気軽に楽しめる外部メモリとしては唯一の選択肢であり、新しい可能性を提示する意欲的なデバイスといえる。
(海上忍)