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<山本敦のAV進化論 第52回>音質や使い勝手を一斉チェック

ソニー/デノン/パロット − ワイヤレス+ノイキャンの“全部入り”ヘッドホン3機種を徹底比較

公開日 2015/05/01 15:32 山本 敦
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■パロット「Zik2.0」

2012年に発売された初代の「Zik」は、イヤーカップに搭載したタッチパッドコントローラーやアクティブNC機能、モバイルアプリによるサウンドのカスタマイズ機能など、デジモノ好きのハートをがっちりと掴んだ“元祖・全部入り”と呼べるヘッドホンだ。

パロット「Zik2.0」

本機ではNC機能がアナログからフルデジタルにアップデートされ、特に新搭載の「Adaptive Noise Cancelling」技術は、本体に内蔵する8基のマイクのうち、6基をNC用に使い、周辺環境に合わせて効果のレベルが調節できるという画期的な機能になる。

本体には合計8基のマイクを搭載する

電源ボタンと端子部

NC効果の調整はBluetoothでヘッドホンとペアリングしたスマホ・タブレットに、専用アプリ「Parrot Zik 2.0」をインストールしてコントロールする。例えば電車や地下鉄など、周囲の騒音レベルが高い場所で音楽を聴く際にはNC効果を高めるなどの設定ができる。

Android版「Parrot Zik 2.0」アプリのメイン画面

NC機能のコントローラー。オレンジ色のサークルを動かして効果を調節する。円を外側に広げると「ストリートモード」に切り替わる

そして、オフィスで仕事をするときなど周りの音にも注意を払いながら音楽を聴きたいときには、同社の特許技術である「ストリートモード」が便利。NC機能を効かせながら周辺の音がヘッドホンでモニターできるという機能だ。その原理はヘッドホンに内蔵されている6つのマイクで周囲の音を拾って、デジタル処理によって音楽信号とバランスを取るというものだ。

イコライザーもタッチ操作に対応

音場感も再生音をモニターしながら調節ができる

アプリの画面で、NC機能はオレンジの円の大きさがNC効果の強弱を表しており、サークルを大きくしていくことで「ストリートモード」に切り替わって、環境音が聞こえるようになる。小さくしていくとNC効果が最大値となるが、その時の消音効果はかなり高め。周囲の音はハードにキャンセルされる。アプリではNC機能の効果設定だけでなく、本体のバッテリー残量を確認したり、イコライザーによる音場設定が指だけのスワイプ操作で直感的にできるのが面白い。

著名アーティストのイコライザープリセットも用意

ユーザーオリジナルのイコライザー設定もつくって登録できる

ハンズフリー通話は2基のマイクと骨伝導センサーを併用することで低周波数帯域の声が特に聴き取りやすくなっている。ペアリングしたスマホに着信があると、NC機能は自動的にストリートモードに切り替わって、自分の声もマイクで拾いながら通話ができる。SiriやGoogle Voiceと連携して、スマホの電話帳に登録されている友人の名前を発声して自動でダイアルできたり、着信時にコールのあった相手の名前を読み上げてくれたり、ハンズフリー通話の使い勝手を全体的に高める仕様がふんだんに盛り込まれている。

操作の面で大きな特徴になるのは、右側のイヤーカップに搭載するタッチパッドコントローラーだ。音楽再生のコントロールや音声認識の起動、通話機能などをヘッドホンを装着したままでも軽快に行える。もうひとつのセンサー技術を活かした機能には、ヘッドホンを頭に装着すると自動で音楽の再生・一時停止操作ができる「プレゼンスセンサー」もある。反対に、本体に搭載するボタンは電源のオン・オフぐらいだ。

本体の質量は270gと、初代機よりも軽くなった。本体のアルミフレームと柔らかな合皮の質感を活かした、プロダクトデザイナーのフィリップ・スタルク氏によるミニマルな本体デザインも質感が高い。パッドのクッションを厚くしながら本体を薄型に設計しているので、装着感は上がっている。ただ筆者は頭が大きいので、ヘッドバンドの寸法を長めに設定してもギリギリのサイズだったので、もう少し長さ調節にゆとりを設けて欲しかった。

ヘッドバンドは柔らかい合皮素材を採用

アルミフレームとのコンビネーション

リスニングスタイルはワイヤレスとNCを互い違いにオン・オフしながら使えるし、ワイヤードリスニングもできる。ただ一方で、NC機能のオペレーションはアプリ経由でしかできない。例えば今回、先の2モデルを試聴する際に使ったウォークマン「NW-A16」はプラットフォームがAndoridではないので、パロットの専用アプリをインストールできない。ヘッドホンがマルチポイント接続にも対応していないので、独自OSのポータブルオーディオプレーヤーと組み合わせる場合は、ノイズキャンセリング機能が使えなくなる。本機に関してはiOS/Androidスマートフォン、タブレットとの組み合わせで真価を発揮するヘッドホンであると言えそうだ。

バッテリーの最大連続再生時間はBT/NCオン時で約6時間と、他の機種に比べると少し短めだが、バッテリーパックがハウジングの蓋を開けて簡単に行えるようになっているので、予備のバッテリーが用意されればバッテリー切れの不安も軽くなるはずだ。

パッドを外すとバッテリーパックにアクセスできる

Bluetoothの高音質オーディオコーデックはAACをサポート。aptXは非対応になる。本機はスマートフォン「Xperia 2」で音質をチェックした。アプリを使って設定できるEQと音場カスタム設定の機能はオフにしている。

Xperia Z2でサウンドを確認した

中低域のタイトさと量感のバランスの良さは本機の持ち味だと思う。余韻が自然に広がり、空気感はドライに再現される。高域については余韻成分の広がりが若干淡泊に感じられる面もあるが、ニュートラルなバランスにまとまっている。無闇に特定の帯域を強調する感じがないのは好印象だ。

女性ボーカルはNC効果の効き目が高く、声の微細なニュアンスがキャッチできる。NC効果を高めておけば外出先でも音楽リスニングにどっぷりと集中できる環境がつくれる。NC効果は最大からストリートモードまでリニアに変化して、オフにしても音づくりのバランスに変化がない。基本がフラットな味付けなので、アプリのイコライザー機能を活用して自分の好みの音設定を追い込んで使うのも楽しいと思う。カスタム設定を保存して、特定のアーティストや音楽ジャンルに関連づけられる機能などには、パロットのソフトウェア開発技術の高さを実感させられる。

プレーンな音づくりのヘッドホンに、イコライザーやノイズキャンセリングなど色々な味付けを加えて自分好みにカスタマイズできる楽しさを実感してこそ、満足度が高まってくるヘッドホンだと思う。モバイルを中心に音楽リスニングを楽しむユーザーにはうってつけと言える。イノベーティブなスピリットに溢れるヘッドホンだ。

本体の付属品。キャリングポーチが付いてくる

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ワイヤレスヘッドホンのトレンドは「音質」と「多機能」の双方の進化が交差しながら極まりつつあることを、実感させられるようなパフォーマンスの高い“全部入り”ヘッドホンをテストできた。本機以外にもこの春にはB&O PLAYの「H8」が発売され、これからヘッドホンブランドの上位シリーズには“全部入り”のモデルが加わってくる期待感も出てきている。さらに今回取材したパロットのように、センシング技術との融合も進んでくるだろう。元祖・ウェアラブルAV機器であるヘッドホンの多様な進化の方向性にもぜひ注目しながら、引き続き注目製品を追いかけて行きたい。

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