7Hz〜40kHzの広帯域再生に対応
フィリップス「F1」レビュー - ハイレゾをカジュアルに楽しめるヘッドホン
■ハイレゾ音源を使って試聴
ではハイレゾアルバムをF1で再生して試聴インプレッションを綴ってみたい。登場するのは次の3タイトル。高田漣『コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜』(96kHz/24bit)、原田知世『恋愛小説』(96kHz/24bit)、パンチブラザーズ『The Phosphorescent Blues』(96kHz/24bit)。なお、プレーヤーはAstell&Kernの「AK120II」を使用している。
日本フォークシーンの開拓者であり、かつ独特な存在でもあった高田渡。彼の息子で弦楽器のマルチプレーヤーとして、近年八面六臂の活躍を見せる高田漣が、父ゆかりの楽曲をカバーしたのが『コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜』である。
F1は、父親であり偉大なミュージシャンに対する想いのこもった楽曲たちを、温かなトーンで表現した。作品の内容と音質とがシンクロしたかのようである。また、ヴィンテージのマイクやレコーダーなどを用いて一発録音されたそうで、それは特にボーカルの柔和さに現れている。アコースティックギターやスライドギターの抑揚やうねりも感じさせ、高域は耳を刺激しない。
原田知世は女優としての活動はもちろんのこと、ミュージシャンとしてのキャリアも長い。高田漣とはバンド、pupaのメンバー同士でもある。『恋愛小説』は伊藤ゴローのプロデュースや編曲による、洋楽のカバー集。
2曲目のソウル風味で味付けされたノラ・ジョーンズの「ドント・ノー・ホワイ」はアルバムのハイライトのひとつだ。原田のボーカルはクリアで、リズム隊には重みがあり音楽を引き締めている。それに、ホーンセクションはしなやかさを伴って伝わってきた。
続くレナード・コーエンの「イン・マイ・シークレット・ライフ」は、翳りのある歌声と余韻たっぷりのソプラノサックスやウッドベースが、寂しげな雰囲気を織り上げている。本機は音場の密度の高さも感じさせてくれる。その上、このテイストは音量を絞っても味わえる。
最後は、マンドリンやバンジョー、フィドルなどで構成されるアメリカの5人組バンド、パンチブラザーズの『Phosphorescent Blues』。タイトルにある“Phosphorescent”にlampを付けると蛍光灯という意味だから、青白く光るブルースということだろうか。ジャケットはベルギー出身のシュルレアリスト、ルネ・マグリットの作品から採られている。それはともかく、彼らが面白いのは、カントリーやブルーグラスで用いられる楽器を駆使して、オルタナティブロックにも通じる世界を創出していること。また、このアルバムではドビュッシーやスクリャービンの作品もカバー。実にユニークなアプローチでひとつの世界を作り上げているのだ。
F1で再生する「I Blew It Off」では、バンジョーやマンドリンの弦が弾かれる一瞬一瞬が立ち上がり素早く伝わってくる。ドラムスの迫力も十分で、厚みもある。ボーカルやベースは耳の中に直線的に届く。それはプレーヤーたちの腕の確かさまで感じさせるほどだ。しかも、音楽全体が散漫にならず、各パートが程よく調和し躍動している。
ケーブルは左片出しで、着脱可能。インラインマイクも搭載する。さらに、ハウジングを回転させてフラット収納することもできる。アウトドアでもハイレゾをカジュアルに、というコンセプトが、優れたサウンドとフィーチャーから浮き彫りになってきた。
(中林 直樹)
ではハイレゾアルバムをF1で再生して試聴インプレッションを綴ってみたい。登場するのは次の3タイトル。高田漣『コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜』(96kHz/24bit)、原田知世『恋愛小説』(96kHz/24bit)、パンチブラザーズ『The Phosphorescent Blues』(96kHz/24bit)。なお、プレーヤーはAstell&Kernの「AK120II」を使用している。
日本フォークシーンの開拓者であり、かつ独特な存在でもあった高田渡。彼の息子で弦楽器のマルチプレーヤーとして、近年八面六臂の活躍を見せる高田漣が、父ゆかりの楽曲をカバーしたのが『コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜』である。
F1は、父親であり偉大なミュージシャンに対する想いのこもった楽曲たちを、温かなトーンで表現した。作品の内容と音質とがシンクロしたかのようである。また、ヴィンテージのマイクやレコーダーなどを用いて一発録音されたそうで、それは特にボーカルの柔和さに現れている。アコースティックギターやスライドギターの抑揚やうねりも感じさせ、高域は耳を刺激しない。
原田知世は女優としての活動はもちろんのこと、ミュージシャンとしてのキャリアも長い。高田漣とはバンド、pupaのメンバー同士でもある。『恋愛小説』は伊藤ゴローのプロデュースや編曲による、洋楽のカバー集。
2曲目のソウル風味で味付けされたノラ・ジョーンズの「ドント・ノー・ホワイ」はアルバムのハイライトのひとつだ。原田のボーカルはクリアで、リズム隊には重みがあり音楽を引き締めている。それに、ホーンセクションはしなやかさを伴って伝わってきた。
続くレナード・コーエンの「イン・マイ・シークレット・ライフ」は、翳りのある歌声と余韻たっぷりのソプラノサックスやウッドベースが、寂しげな雰囲気を織り上げている。本機は音場の密度の高さも感じさせてくれる。その上、このテイストは音量を絞っても味わえる。
最後は、マンドリンやバンジョー、フィドルなどで構成されるアメリカの5人組バンド、パンチブラザーズの『Phosphorescent Blues』。タイトルにある“Phosphorescent”にlampを付けると蛍光灯という意味だから、青白く光るブルースということだろうか。ジャケットはベルギー出身のシュルレアリスト、ルネ・マグリットの作品から採られている。それはともかく、彼らが面白いのは、カントリーやブルーグラスで用いられる楽器を駆使して、オルタナティブロックにも通じる世界を創出していること。また、このアルバムではドビュッシーやスクリャービンの作品もカバー。実にユニークなアプローチでひとつの世界を作り上げているのだ。
F1で再生する「I Blew It Off」では、バンジョーやマンドリンの弦が弾かれる一瞬一瞬が立ち上がり素早く伝わってくる。ドラムスの迫力も十分で、厚みもある。ボーカルやベースは耳の中に直線的に届く。それはプレーヤーたちの腕の確かさまで感じさせるほどだ。しかも、音楽全体が散漫にならず、各パートが程よく調和し躍動している。
ケーブルは左片出しで、着脱可能。インラインマイクも搭載する。さらに、ハウジングを回転させてフラット収納することもできる。アウトドアでもハイレゾをカジュアルに、というコンセプトが、優れたサウンドとフィーチャーから浮き彫りになってきた。
(中林 直樹)