[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第127回】急な入院! 高橋敦が咄嗟に選んだ「入院イヤホン」
■入院していない状態でのDM100の実力とは?
そんなわけで僕の入院時に大活躍してくれた「DM100」だが、さすがに入院時の特殊な利用シーンだけのレビューでは微妙なので、普通に改めての音質チェックも軽く行っておこう。
まず印象的なのは音の抜けや広がりの良さだ。すっとしたアタックからすっと広がって消えていく。音が不本意にもたついてしまうことがない。空間の広がりの自然さや空間の余裕もカナル型イヤホンとしてはかなりのレベル。それらの代わりにローエンドは少しタイトには思えるが不足するというほどではない。
相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」冒頭のバスドラムはタイトでありつつ豊かな空気の響きを感じさせてくれる。ベースもやはり重さや太さはほどほどで、明瞭さがポイントだ。低音楽器のゆったりとした膨らみを感じさせてくれるイヤホンもそれはそれでうれしいが、こちらの方向性もなかなかよい。
ハイハットシンバルの鈴鳴りの美しさは小口径ダイナミック型ハイエンド機を思い起こさせる。仕様は明らかにされていないが見たところ、本機のドライバーは中口径といったところではないかと思う。それでいてのこの感触こそが「Balanced Dynamic Driver」の威力なのだろう。
そのシンバルややくしまるえつこさんのボーカル、あと花澤香菜さん「こきゅうとす」のボーカルは、質感を豊かにシャープに出しつつも、その感触を良くも悪くもざらつかせずに繊細で優しい印象。例えばシンバルにロック的なジャキッとしたキレがほしいならこのイヤホンはそちら方面は得意とは言えない。一方でハイハットワークの機微であるとかボーカルの息遣いであるとかをうるさくなく穏やかに堪能したいなら、このイヤホンはまさに適任だ。
■入院イヤホン=普段使いでも最高!なはず
というわけで入院イヤホンとして高い実力を示してくれたこのイヤホン。メーカーとしても「入院するならDM100!」キャンペーンとかを展開してみてはどうだろうかと思う。
…冗談はさておき、「入院時さえも快適に使えるヘッドホンならば普段使いでも快適なことはまちがいなし!」ということは言えるはずだ。音質面での実力も前述の通りだし。僕は思わぬ形でお世話になってしまったが、みなさんは普通に健康に普段使いのためにこのモデルをチェックしてみていただければと思う。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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