[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第129回】50万円DAP「AK380」を「どうせ買えないがゆえの冷静さ」で厳しくレビュー
■その超弩級のスペックや機能を確認
まずはわかりやすく超弩級なポイントである、スペックや機能を確認しておこう。
スペック的に特に光るのは、
●PCM 384kHz/32bit ネイティブ再生
●DSD 5.6MHz ネイティブ再生
ここだろう。特にPCM再生は従来のシリーズ最高峰の「AK240」でも、192kHz/24bitを超えるフォーマットは192kHz/24bit以下にダウンコンバートしての再生だったところだ。最新ハイエンドDACチップであるAKM「AK4490」のスペックをポータブル機として可能な限り、そして必要な範囲の最大限に引き出している(AKM4490自体は768kHzやらDSD11.2MHzやらにまで対応)。
もちろんそこまでのスペックそれ自体は、そのスペックの音源がほとんど配信されていない現時点では、オーディオファンにとって必須なものではない。
しかし過剰なオーバースペックかというとそうとも言えない。このモデルは「プロオーディオの使用環境で求められる多くのニーズに応える形で機能を強化」というモデルだ。ならばポータブルモニター環境として、音源制作時に用いられる可能性があるフォーマットへの対応は求められる。
またその突き抜けたスペックを前提としてその他の部分への要求も高まることで、一般的なフォーマットの再生時にはその余裕が好ましい結果(音や安定性)につながるはずだ。こちらの利点は誰にとってもの恩恵と言える。
他に目立つのは音質をカスタマイズできるEQ機能がAK史上最高に充実していることだ。メインCPUの他に専用DSPを搭載することで実現されているという。20バンドで0.1dBというのは、調整したい周波数(Hz)を20点まで指定して、その1点ごとに僅か0.1dB単位で増減できるということ。組み合わせるイヤホンや自分の頭の中にあるリファレンスサウンドに合わせて、本機の音を詳細にチューニングできる。こちらもプロ用途でのシビアなチューニングを想定しているのかもしれない。
だがその詳細さ故に、使いこなせすにはエンジニア的な知識や感覚が必要とされることは否めない。まあでもオーディオユーザーでEQを好んで使う方はあまりいない印象なので、オーディオユーザーに向けてはここは大きな売りにも弱点にもならないかも。