大ヒットモデル上位機の実力を探る
ティアック「UD-503」を山之内 正がレビュー。プリとしての使い勝手やクロック入力まで徹底検証
■まずはUSB-DACとしてのサウンドをチェック!
最初に本機のメイン機能であるUSB-DACの音を聴いてみよう。ライン出力を固定に切り替え、ハイエンド機器で揃えた試聴室のリファレンスシステムで聴く。同一条件でつないだUD-501と比べながら紹介する。再生ソフトはAudirvanaPlusを使用した。
結論から先に紹介しよう。UD-503の再生音は、UD-501の長所でもある粒立ちの良さや解像感の高さに加えて、一音一音の密度が上がって力強さを増したことが大きな特徴だ。
さらに、特にバランス接続ではサウンド全体の重心が下がって、低音が力強さを増すことにも注目したい。ジャズはベースの実在感が向上、オーケストラはコントラバスなど低音楽器の支えが厚く、どちらもスケールがひとまわり大きくなったような印象を受ける。
また、声など中音域にも密度の高さがそなわる。たとえばソプラノのネトレプコが歌うヴェルディのアリアは、高い音が細身にならず、濃密な強い声が聴き手を圧倒。エミリー・バーカーのヴォーカルも高音が痩せず、伸びやかさを失わない。子音が強調気味にならず、発音は素直でナチュラルだ。
本体がコンパクトなので少し意外に感じるが、アキュフェーズのC-3850とP-4200、モニターオーディオのGOLD300を組み合わせたシステムで聴いても、音に十分な厚みがあり、本格システムならではのスケール感が伝わってくる。ここまで骨太の音を引き出せるのであれば、単体D/Aコンバーターとしてハイエンドシステムに組み込んでもなんら違和感はない。実際にそうした用途を想定しているかどうかわからないが、パソコンの音源から骨格のしっかりしたサウンドを引き出したいなら、UD-503は有力な候補になる。
DSD信号の再生は新たに11.2MHzまで対応した。本体のサポートに加えて、ティアックが提供する再生ソフト「TEAC HR Audio Player」も、バージョンアップによってDSDの最大スペックまで再生できるようになった。
このプレーヤーソフトは、事前に面倒な設定がいらず、操作も非常にわかりやすいので、ハイレゾ音源の再生ソフトとして広くお薦めできる。USB-DACはパソコンの音源を高音質で楽しめるという長所があるが、その一方で、OSや再生ソフトの設定やチューニングが難しく、パソコン初心者には敷居が高い面がある。使いやすい再生ソフトを利用できるのは、本機を選ぶ理由の一つになりそうだ。
11.2MHzで録音したヴォーカルは声に余分な響きがまとわりつかず、すっきりとしたイメージが浮かぶ。澄み切った音場のなかに深々としたサウンドステージが展開し、ライヴの臨場感がダイレクトに伝わってきた。2.8MHzのDSDで収録されたピアノ協奏曲では残響が作り出す空間が広大で、礼拝堂の余韻に包まれる感触が心地よい。空間表現の大きさと立体的な音場再現力は、姉妹機のUD-501に比べてひとまわりスケールが大きくなっていると感じた。