大ヒットモデル上位機の実力を探る
ティアック「UD-503」を山之内 正がレビュー。プリとしての使い勝手やクロック入力まで徹底検証
■「UD-503」のプリアンプ機能の実力とは?
次にアナログ出力を可変出力に切り替えて、本機のプリアンプ機能に焦点を合わせることにしよう。本機のアナログ出力をP-4200に直結し、大出力パワーアンプをダイレクトにドライブするという、かなり大胆な組み合わせだ。本機のコンセプトは小型のパワーアンプやアクティブスピーカーとの組み合わせを想定しているはずだが、ハイエンド機器との組み合わせも、実はそれほど的外れとは言えない。それについては後で説明する。
本機のプリアンプ機能の中心をなすボリューム回路には、「TEAC-QVCS」と呼ばれるバランス設計を導入している。クワッドボリューム・コントロールシステムという名の通り、左右それぞれ正負の計4回路の本格的な構成で、0.5dB単位で計256ステップというきめ細かい調整ができる点にも特徴がある。
■シビアな音楽ファンの要求にも応えられる実力
プリアンプとしての性能を見極めるには、S/Nとセパレーションに注目するのが早道だ。その点、本機は期待以上の性能を獲得しており、特にセパレーションの高さはかなり水準が高い。ハイレゾ音源の息を呑むような静寂感をリアルに再現することから、S/Nについても実用上はまず不満のないレベルを確保していることがわかる。たんなる付加機能ではなく、シビアな音楽ファンの要求にも応えられる実力の持ち主と言ってよさそうだ。
さて、既存のオーディオシステムにパソコン音源を組み込む場合、手持ちの大型パワーアンプと組み合わせる方法は意外に現実味がある。手持ちのプリアンプにUSB-DACのライン出力をつなぐのが一般的かもしれないが、UD-503のようなプリ機能付きの製品をあえてパワーアンプに直結し、ソースとプリアンプを既存の信号とは独立に用意するという方法もあるのだ。
特に、パソコンとオーディオ機器が離れている場合は、この方法の方が机の上で直接操作でき、配線もすっきりする良さがある。アンバランスとバランス2系統の入力を持つパワーアンプと組み合わせれば、パワーアンプ側の入力を切り替えるだけで、CDなど既存のソースとパソコンの音源を手軽に鳴らし分けることができるので、ぜひお試しいただきたい。
本機のバランス出力は低重心の落ち着いた音調に特徴があるが、その一方でアンバランス出力のクオリティ感の高さにも注目しておきたい。バッファ回路をパラレルで駆動する「TEAC HCLD」方式が効果を発揮しているのか、アンバランス接続でも音楽の振れ幅がダイナミックで、起伏に富んだ音を引き出すことができる。バランス、アンバランスどちらの場合でも、本格オーディオシステムとの組み合わせを含む多様な用途で威力を発揮するはずだ。