大ヒットモデル上位機の実力を探る
ティアック「UD-503」を山之内 正がレビュー。プリとしての使い勝手やクロック入力まで徹底検証
■アクティブSPと直結したミニマムシステムを構築
規模の大きな再生系での試聴が続いたので、アクティブスピーカーをつないだミニマムなシステムでのパフォーマンスも確認しておこう。コンパクトながらバランスの良い再生音に定評のあるGenelecのG2を組み合わせ、ニアフィールドで聴いてみる。音量はプリアンプモードに設定した本機の側で調整した。
すべての機器が机の上に載ってしまうほどの小さなシステムだが、特にアコースティック情報を多く含む音源は意外なほどの奥行きを再現し、スピーカーに音が張り付かない。ヴォーカルのステレオイメージがぶれず、きれいな輪郭の音像が浮かぶことにも感心させられた。ベースは量感こそそれなりだが、音の立ち上がりが緩みにくく、速さは期待以上。動きがもたつかず、こもり感も少ない。小型スピーカーというと、バランスの悪さやレンジ感の物足りなさが気になるところだが、UD-503とG2の組み合わせは、そうしたネガティブな部分をほとんど感じさせない。
最後に外部クロックをつないだ効果について、簡単に紹介しておこう。本機は44.1kHzと48kHzを独立させた高品位なクロック回路を内蔵しているが、ルビジウムなどきわめて高精度な素子を用いた外部クロックジェネレーターをつなぎ、さらなる音質改善を狙うことができる。今回はAntelope社のIsochrone 10Mを本機のクロック入力端子(BNC)につなぎ、USB接続時の音の違いを確認した。
外部クロックに切り替えると、鮮度の高い本機の音色を保ったまま、空間のパースペクティブが前後左右に深くなり、余韻が伸びていく動きがリアルに浮かび上がってきた。エネルギーや密度感には大きな変化はないものの、空間表現については、外部クロックの方が一段階上のステップに上がる印象だ。ルビジウムのクロックジェネレーターは本機の数倍に及ぶほど高価なデバイスだが、音を追い込んだシステムではクロックの違いは確実に聴き取ることができる。
D/Aコンバーターに限らず、クオリティにこだわったA4サイズのコンポーネントが国内外のブランドから登場している。ティアックのリファレンスシリーズはその流れを牽引する存在で、UD-501やUD-503はそのなかでも特に重要な製品群だ。UD-503は、「コンパクトだがクオリティで妥協しない」というコンセプトを鮮明に打ち出し、その成果を確実に聴き取ることができた。本機の登場でシリーズ全体の特徴が際立ち、今後の展開にも楽しみが広がる。
(山之内 正)