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【特別企画】「並み居る4Kテレビの先頭に立つ製品」

「レグザ Z20X」を大橋伸太郎が徹底解説。“レグザ史上最高画質”実現の背景とは?

公開日 2015/11/10 11:56 大橋伸太郎
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それを実感したのが、ポール・トーマス・アンダーソン監督の近作映画「インヒアレント・ヴァイス」(2K BD)の冒頭シーン。のっぴきならない状況に追い込まれた富豪の愛人が元カレの私立探偵を訪ねるシーンで、次第に暮れなずむ窓の光をバックにした俳優二人のやりとりの半逆光撮影の表現が素晴らしく美しい。

製品を確認する大橋氏

明暗のバランスに優れることに加え、広色域復元によって室内風景や衣装の原色、暗がりの中の俳優の表情(無彩色に近い)までノイズが抑えられ階調を失わずニュアンスに富む。1970年代米西海岸のポップ(ドラッグ)カルチャーの幻惑美を描くため35mmフィルムで撮影した作り手の意図と拘りがありありと伝わってくる。

今期4Kテレビの大勢はHDR対応に移行しているが、明るさ競争の結果、被写体の中でバックライトが明るさを増す箇所で4Kスケーラーのノイズが目立つ心配も出てくる。しかしその点、「Z20X」は破格に明るいだけでなくノイズ抑制も非常に上手くいっている。

例えば昨年のアカデミー賞最多数受賞作「バードマン」。冒頭のカメラに白く広い背中を向けた主演マイケル・キートンのアップは、新映像エンジンの判断が的確で、ノイズを抑えつつ膚の起伏の微妙な階調情報を損なわず肉体の生々しい実存を観客に強烈に印象付ける。そうでなくては主人公の妄想と現実がカクテルするストーリーのその後が生きてこないではないか。光を制するものは映画を制するのだ。

注目の4KネイティブHDR映像はどうか。ST2084、BT.2020映像で確認したところ、明るい部分に色付きがなく輝きが鈍らない光のピュリティと鮮鋭感は圧巻だ。と同時にここでは暗部の汚れの無さ、深みを増した黒の美しさに目を奪われる。黒の中のニュアンスが一気に開花した印象だ。ネイティブHDRに拠るところが大きいのは無論、コスト増を呑んで採用したクリアパネルの貢献の度合いが分かる。「Z20X」を店頭で視聴するなら、可能であれば一度照明を暗くしてもらって暗部撮影の優れた映像で試してみてほしい。



今期テレビは大きな変革を迎えた。テレビの画質の三大要素は解像力、色彩表現、コントラストだが、過去のテレビの進歩はつねに先の二つが主導した。4K HDRの登場で残る一つコントラストについてハードソフトのシステムワークで抜本的進化に取り組んだのは画期的である。

テレビ各社が新時代への対応を急いでいるが、4Kで先んじた東芝がここ4K HDRでも強烈な存在感を示した。本機「Z20X」は並いる4Kテレビの中央を先頭に立って歩む製品と断言していい。

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