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300B真空管を今こそ採用した意図とは?

ラックスマン「MQ-300」を聴く − 300B管の魅力と駆動力を両立させた真空管アンプ

公開日 2015/11/13 17:11 井上千岳
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ラックスマンだからこそ300Bの特質と十分な駆動力という“汎用性”を両立できた

MQ-300でアナログレコードを聴くと、30年前にこういう音が出ていたらなぁという気がする。当時では球のアンプを使っても、とてもこんな伸びやかで柔らかな音は得られなかったものだ。そこにはスピーカーやカートリッジ、フォノイコライザーなどの進化もあるのだが、その条件下であらためてこうしたアンプを聴くと、アナログのよさはまたひとしおである。

井上氏はMQ-300について、300B管の魅力を引き出しながら駆動力という汎用性も両立させた点を特筆する

コレギウム・アウレウムによる「バッハ:二重協奏曲ニ短調」の柔和できめ細かな質感は、独特の艶を帯びて陰影に富む。アンサンブルの瑞々し響きが、実にこうあってほしいという感触で鳴っている。

カール・シューリヒトがフランス国立放送管を振ったベートーヴェンの「第3」は、ダイナミズムに富んで生命力に溢れた演奏だ、その全てをいまでき上がったばかりのような新鮮さで描き出すのが、本機の音である。弦楽器の切れのよさ、ティンパニーの鋭さ、トゥッティでの瞬発力など、アナログを聴くならこうでなければという瞬間に満ちている。

オイゲン・ヨッフムの「カルミナ・ブラーナ」はこれまでにないほど生々しい。コーラスの息遣い、打楽器の強靭さなど、レコード自体を見直したほどだ。分解能の細かさがそのまま出てくるのが、アンプの凄みと言えるだろうか。素のままだが、その破壊力が強力なのである。

どうだろう。これで本機が、ただの300Bアンプではないことがわかったのではないだろうか。音を聴けばその意義がわかると最初に言ったが、それがつまりこういうことなのだ。繊細で柔らかく純粋と言われる300Bの特質は残しつつ、十分なパワーと駆動力という汎用性をぎりぎりまで引き出したのが本機である。回路構成から電源、パーツ、シャーシなど真空管の周囲を徹底して固め、こうした音質を実現したのだ。まさしくラックスマンでなければできない芸当と言える。実に稀に見るような製品である。

(井上千岳)

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