【特別企画】ブランド初の2ドライバー搭載機を野村ケンジがチェック
クリプシュ新旗艦イヤホン「X20i」実力検証 − ついに登場したハイレゾ対応機を聴く!
なんと、質感の高いサウンドだろう。時に良好なのが、高域の歪み感のなさ。おかげで、ストレスのない、伸びやかなサウンドが楽しめる。特に女性ヴォーカルの表現が顕著で、「X10」と共通するイメージのある、距離感の近い立ち位置ながらも、声の特徴がよく分かる、活き活きとした歌声が楽しめる。
たとえばNobieバンドの「Tombo in 7 4 (UP Tempo)」を聴くと、ライブ会場の盛り上がりのなかから、ぐっと前にせり出して熱唱する力強いヴォーカルが楽しめる。いっぽうで、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの「BEAUTIFUL=SENTENCE(IS IT A BEAUTIFUL WORLD )」は、女性ヴォーカル2人の、普段より少し大人びた歌声が心地よく響く。
とはいえ、「X20i」の真骨頂といえばやはりアコースティック楽器の表現。溝口肇「亜麻色の髪の乙女」では、チェロのボーイングをしっかりと聴かせながらも、その周りに広がる音までしっかりと拾い上げて絶妙にミックス。ムードのあるサウンドを堪能させてくれる。
そう、「X10」の熱気を帯びた快活なサウンドとは全く異なり、ワイドレンジで特性の良い、随分とクリアなイメージの強いサウンドに生まれ変わっているのだが、そのいっぽうで魂の部分というか、ヴォーカルを人間らしく活き活きと表現する部分は変わらず継承されているのだ。これは面白い。
明らかにクオリティ面では「X20i」が格段に上となるが、かといって「X10」の魅力を否定する訳ではない。クリプシュでありながら、そして同じXシリーズでありながらも、全く別の方向性で良音質を追求した、似て非なるものに仕上がっているのだ。
アコースティックな楽器が得意なキャラクターは維持しつつ、JポップやEDM、テクノまで幅広いジャンルの楽曲をそつなく再生してくれるあたり、最新のハイレゾ音源を念頭に開発したという結果がしっかり反映されている。
クリプシュらしさあふれるサウンドがより幅広い音楽ジャンルで楽しめる、といった点で、なかなかに魅力的な製品といえる。
<次回予告>評論家対談:野村ケンジと高橋敦がX20iの魅力を語り合う!近日公開! |