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【レビュー】ELACから登場、5.5万円〜のエントリー機「Debut LINE」は“あの名匠”の自信作

公開日 2015/12/04 11:00 鴻池賢三
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サブウーファーの“BT音場補正”がエントリーで享受できる魅力

サブウーファーでやはり注目すべきは、S10EQが搭載したAdvanced Bluetooth Control機能だ。使い方はSUB2070と同等である。まずサブウーファーの間近で自動生成されるテストトーンを測定し、次に視聴ポイント付近でもう一度測定する。差異を見ることで定在波による周波数特性の乱れを精度良く把握し、これをイコライザーで自動補正できる。イコライザーのバンド数は一般的なAVアンプよりも多く、きめ細やかな補正ができるのもアドバンテージだ。

BluetoothによるEQ調整に対応した「S10EQ」。本機のEQ機能も検証した

また測定データがグラフで確認できるので、大きなディップ(谷のように、極端に音圧の低い周波数)がある場合、サブウーファーの位置を再検討するきっかけにもなる。もし設置場所に複数の候補があるならば、各所の測定を行い、ディップが少ない場所が最良と判断できる。イコライザーによる補正量は少ない方が良いし、特にディップのように「音が無い」ような状態に場合は、イコライザーでも持ち上げることができないので、こうした場所への設置は避けるのが定石だ。今までプロでも困難だった高度な設置が、本機の測定機能によって誰にでも確実にできるようになったのだ。

まずはサブウーファーの目前で測定

次に視聴ポイントで測定を実施

S10EQのドライブ能力は凄まじい。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の冒頭、鉄の扉が閉じる際の重低音は、部屋の空気全体を揺るがし、腹の底に轟く迫力だ。駆動力に余裕があるだけでなく、パッシブラジエーターによってコントロールされており、最低域もきちんと“音”になっているのも美点と言える。目玉のイコライザー機能は、音楽BDで顕著な違いを体感できた。ロイ・オービソン『Black & White Night』では、周波数特性的に落ち込んで聴こえていなかった部分が埋められ、空間の繋がりが改善される印象だ。また、サウンド全体の厚みが増してバランスも良くなり、ヴォーカルやベースの躍動感が増す効果も得られた。

アプリ上に表示された測定結果(こちらは視聴ポイント測定時のもの)

2箇所の測定結果を元に自動調整されたEQの結果(緑のラインがEQを示す)

アプリからは音量調整やEQのオン/オフも手軽に操作できる

下位モデルのS10は、価格が倍近いS10EQと比べてしまうと、絶対的な低域や質感表現では及ばないが、各スピーカーとの繋がりが良く音場に自然な厚みを加えている。何より5.5万円という価格は魅力で、10畳程度迄の部屋なら検討に値するクオリティを備えていると言える。コストパフォーマンス重視のユーザーは特に注目すべきモデルだ。

◇◇◇


外観は半艶消しといった仕上げ。ELACらしいピアノフィニッシュを思わせる艶感と、シアタールームで気になり易い迷光低減の両立を狙ったものだろう。視聴中はプロジェクターの光がスピーカーを浮き上がらせる場面はなく、シアタールームとマッチングの良さを感じた。現実的な価格帯であり、価格帯を超えるクオリティは本物。コストパフォーマンスに優れた優秀モデルで、ホームシアター“デビュー”を考えている読者にもお薦めしたい好モデルだ。

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