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USB-DACをはじめ多彩な音楽ソースに対応

ケタ違いの能力は “デスクトップ” を超えた!マランツ「HD-AMP1」実力チェック

公開日 2015/12/04 18:18 大橋伸太郎
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圧倒的な瞬発力と駆動力をベースに、奥深い音場を引き出す

試聴は音元出版の試聴室で行った。マランツがリファレンスシステムとして推奨しており、開発にも用いられたというB&W「CM1 S2」との組み合わせから始めよう。まずはCD/SACDでアナログ入力の音質を確かめる。最初に強烈に印象付けられたのが、現代曲を再生した時のパワーと瞬発力。デスクトップに乗る規模のシステムなのに秘めている能力が桁違いだ。

HD-AMP1の試聴風景

ヒラリー・ハーンの『アンコール』(CD)は、バイオリンの弓が弦にコンタクトする瞬間の弾けるインパクトが鮮烈で力強い。音楽の立ち上がりがつねに鋭く一瞬とてなまらない。B&Wの音場表現の特徴に深いデプス(後方への奥行き)が挙げられるが、大型のセパレートアンプもかくやと思わせる程、背後に深い奥行きが生まれ水平方向の眺望が堂々と開ける。CM1 S2はコンパクトなプレイバックリファレンスとして定評がある一方、その色彩感も特徴。さすがに長年のパートナー関係だけあってスピーカーシステムのキャラクターを熟知し、凡百の「クラスDデジタルアンプ」の蒸留水的無味乾燥がなく、多彩な音色を引き出す。

USB入力は、こうしたアナログ入力での音質傾向をベースとしつつ、ESSらしい高い解像感と煌びやかなサウンドが味わえる。さらに、この価格帯のUSB-DACではなかなか聴くことのできない地に足の付いた低域再現が際立つ。『ワルツ・フォー・デビー』(FLAC192kHz/24bit)はスコット・ラファロのベースは、指弾きの克明なタッチと量感を両立させてくれる。MMDFフィルターも聴き比べてみたが、シャープフィルターのプリエコーを排した結果、「FILTER1」「FILTER2」のいずれも先鋭感に富むが、後者のほうがよりリッチなニュアンスだ。

背面端子部。多彩な入力ソースに対応するほか、スピーカーターミナルにはHi-Fiグレード品を搭載した

デスクトップオーディオの範疇には収まらない表現力を持つ

スピーカーシステムを大型フロアタイプのエラックFS249BEに替えてみよう。B&Wの8Ωに対しエラックは4Ω、ドライバー数も多いこの大型システムをHD-AMP1は悠然とハンドリングする。

FS249BEの低域再生能力を引き出し、ヒラリー・ハーンはやや線が太いがB&Wの理知に対し現代曲らしい情念の音楽に変貌する。『アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳』(SACD)のダブルハープは線が太く重厚な表現だが、楽器の周囲に広々した空間が生まれ雄大。ウーファーのグリップ力、低音の支えはコンパクトなプリメインの域を大きく逸脱している。クリスマスソング集『スター・オブ・ワンダー』のオルガンは、さすがにローエンドの一歩手前に止まるが量感は十分だ。

HD-AMP1は、ミュージックリンクの思想を引き継ぎながら、現代のアンプ技術の進歩をストレートに反映して、駆動力や瞬発力に裏付けられた豊かな音場や音色を引き出してくれるアンプだ。デスクトップシステムと遠慮することなく、本格的なスピーカーと組み合わせて、その駆動力と再現性を存分に味わってみるのはいかがだろうか。

(大橋伸太郎)

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