旗艦モデルやHi-Fiアンプの技術を継承
【レビュー】デノン「AVR-X4200W」 - アトモス/DTS:Xをとことん鳴らせるミドルクラス機
CD/ハイレゾ/マルチチャンネルでサウンドをチェック
演奏の特徴をストレートに引き出す
PureDirectモードをオンにして、ヴォーカルとベースのデュオを聴くと、力感と質感が両立した実在感の高いサウンドがスピーカーの前に迫り出してきた。ベースが刻むピチカートのリズムは、一音一音に芯があり、アタックも俊敏で、音がこもりにくい。一方、ヴォーカルにはちょうどいい具合に潤いが乗って、フレーズが途切れることなく、旋律がなめらかに流れていく。アコースティック楽器や声だとPureDirectの効果が特にわかりやすく、静寂から立ち上がるときに音にまとわりつく雑味成分が一段階減る印象を受けた。音楽を聴くときには常にオンにしておく方が良さそうだ。
次に、マルチチャンネルで録音されたSACDをHDMI接続で再生した。R.シュトラウスの『英雄の生涯』は低域に厚みと重量感があり、オーケストラのスケール感に余裕を感じる。そして、このディスクで一番感心したのは、ティンパニや金管楽器の音が立ち上がる最初の瞬間に一番大きなエネルギーが乗っていて、良い意味で鋭さがあること。これはヤルヴィとN響が、スピードと躍動感を意識的に引き出すことを狙って演奏を繰り広げているいることと関係がある。AVR-X4200Wは、そうした演奏の特徴をストレートに引き出すアンプなのだ。ステージ裏手で演奏するトランペットの距離感など、空間情報の描写も精密で、ステージ上に展開する楽器群の配置を遠近感豊かに再現した。
次にUSBメモリとネットワークでハイレゾ音源を聴く。アナログマスターからハイレゾ化されたドムネラスのライムハウス・ブルースは、前方の近い位置に5人の奏者が並ぶイメージがリアルに浮かび、楽器との距離の近さをまずは実感。昨日録ったばかりのような生々しい臨場感がハイレゾ版の聴きどころなのだが、まさにその良さを素直に聴き取ることができた。クラリネットの息遣いやヴィブラフォンのマレットが音板に当たった瞬間の音など、楽音以外の音までそれらしく再現することもあり、ライヴの高揚感がまっすぐに感じ取れる良さがある。ネットワークとUSBの音の差は僅かで、どちらも付帯音が少なく、澄んだ感触を引き出すことが特徴だ。
マルチch音源は処理能力の余裕がサウンドデザインの真価を引き出す
BD再生では環境音などエフェクトの質感を正確に再現し、DSPの演算処理の余裕とともに、新たに採用した32bit仕様DACの情報量の豊かさを強く印象付ける。『ゼロ・グラビティ』のスペースデブリが飛来する場面で、音の軌跡がにじまず、方向が正確に定まることや、スペースシャトルにぶつかるときのインパクトの激しさは、パワーアンプの空間分解能と瞬発力の大きさを物語っている。「映画らしいサウンド」といった大雑把な印象よりも、個々の音の質感や勢いに説得力があり、映画のサウンドデザインの意図を正確に引き出す能力の高さをうかがうことができた。
『ライフ・オブ・パイ』の嵐の場面では、全方向に隙のない高密度な音場が展開し、全チャンネル同時出力でも音が飽和したり、定位がぶれたりしない。専用室を想定してかなり大きめの音量でも聴いてみたが、膨大な量のエフェクトで響きが混濁しないのは立派だと思う。
別の機会に聴いたドルビーアトモス音源の再生時には、移動するエフェクトの軌跡が途切れにくく、連続性のある立体音場を再現する能力が高いことに感心した。5.1ch再生ではそれがある平面のなかで展開するが、プリメインアンプを1台用意してトップスピーカー計4本を前後に追加すると、その動きが3次元に大きく広がり、期待以上に刺激的な体験を提供する。
手持ちのステレオアンプを活用できれば理想的だが、本機1台でもオブジェクトオーディオのポテンシャルを無理なく引き出せる力を持っている。近い将来に3次元サラウンドの導入を狙っているなら、本機は有力な候補になりそうだ。
(山之内正)
演奏の特徴をストレートに引き出す
PureDirectモードをオンにして、ヴォーカルとベースのデュオを聴くと、力感と質感が両立した実在感の高いサウンドがスピーカーの前に迫り出してきた。ベースが刻むピチカートのリズムは、一音一音に芯があり、アタックも俊敏で、音がこもりにくい。一方、ヴォーカルにはちょうどいい具合に潤いが乗って、フレーズが途切れることなく、旋律がなめらかに流れていく。アコースティック楽器や声だとPureDirectの効果が特にわかりやすく、静寂から立ち上がるときに音にまとわりつく雑味成分が一段階減る印象を受けた。音楽を聴くときには常にオンにしておく方が良さそうだ。
次に、マルチチャンネルで録音されたSACDをHDMI接続で再生した。R.シュトラウスの『英雄の生涯』は低域に厚みと重量感があり、オーケストラのスケール感に余裕を感じる。そして、このディスクで一番感心したのは、ティンパニや金管楽器の音が立ち上がる最初の瞬間に一番大きなエネルギーが乗っていて、良い意味で鋭さがあること。これはヤルヴィとN響が、スピードと躍動感を意識的に引き出すことを狙って演奏を繰り広げているいることと関係がある。AVR-X4200Wは、そうした演奏の特徴をストレートに引き出すアンプなのだ。ステージ裏手で演奏するトランペットの距離感など、空間情報の描写も精密で、ステージ上に展開する楽器群の配置を遠近感豊かに再現した。
次にUSBメモリとネットワークでハイレゾ音源を聴く。アナログマスターからハイレゾ化されたドムネラスのライムハウス・ブルースは、前方の近い位置に5人の奏者が並ぶイメージがリアルに浮かび、楽器との距離の近さをまずは実感。昨日録ったばかりのような生々しい臨場感がハイレゾ版の聴きどころなのだが、まさにその良さを素直に聴き取ることができた。クラリネットの息遣いやヴィブラフォンのマレットが音板に当たった瞬間の音など、楽音以外の音までそれらしく再現することもあり、ライヴの高揚感がまっすぐに感じ取れる良さがある。ネットワークとUSBの音の差は僅かで、どちらも付帯音が少なく、澄んだ感触を引き出すことが特徴だ。
マルチch音源は処理能力の余裕がサウンドデザインの真価を引き出す
BD再生では環境音などエフェクトの質感を正確に再現し、DSPの演算処理の余裕とともに、新たに採用した32bit仕様DACの情報量の豊かさを強く印象付ける。『ゼロ・グラビティ』のスペースデブリが飛来する場面で、音の軌跡がにじまず、方向が正確に定まることや、スペースシャトルにぶつかるときのインパクトの激しさは、パワーアンプの空間分解能と瞬発力の大きさを物語っている。「映画らしいサウンド」といった大雑把な印象よりも、個々の音の質感や勢いに説得力があり、映画のサウンドデザインの意図を正確に引き出す能力の高さをうかがうことができた。
『ライフ・オブ・パイ』の嵐の場面では、全方向に隙のない高密度な音場が展開し、全チャンネル同時出力でも音が飽和したり、定位がぶれたりしない。専用室を想定してかなり大きめの音量でも聴いてみたが、膨大な量のエフェクトで響きが混濁しないのは立派だと思う。
別の機会に聴いたドルビーアトモス音源の再生時には、移動するエフェクトの軌跡が途切れにくく、連続性のある立体音場を再現する能力が高いことに感心した。5.1ch再生ではそれがある平面のなかで展開するが、プリメインアンプを1台用意してトップスピーカー計4本を前後に追加すると、その動きが3次元に大きく広がり、期待以上に刺激的な体験を提供する。
手持ちのステレオアンプを活用できれば理想的だが、本機1台でもオブジェクトオーディオのポテンシャルを無理なく引き出せる力を持っている。近い将来に3次元サラウンドの導入を狙っているなら、本機は有力な候補になりそうだ。
(山之内正)