T1 2nd Genと同様に新ドライバー搭載
ポータブルハイエンドも第2世代に。beyerdynamic「T5p 2nd Generation」レビュー
まずはT5p 2nd Generationをシングルエンド接続状態で試聴してみたが、高域から低域まで、ニュアンスの細かい粒立ち滑らかな表現に終始し、抑揚良く艶の乗った麗しい響きを伴ったサウンドを聴かせてくれた。
ピアノや管弦楽器、ギターといったパートは倍音表現を適度に加えたウェットな艶と階調細やかなハーモニクスの響きを持っており、アタックは多少硬質でも余韻の爽やかな音伸びによって、音像の明晰な輪郭感と豊かなリリースの味わいを同時に得ることができる。
低域の響きも程よく引き締め、音場の描写性もクリアであり、見通しの良い空間表現力も特長のひとつだ。ボーカルやウッドベースの胴鳴りはボトムの厚みも自然にまとめ、口元や弦そのもののハリを流麗に描く。
■アンプの駆動方法にしっかり追随する高いポテンシャル
そしてデュアル・モノ駆動での音色だが、アバレのない穏やかな傾向に変化し、中低域の響きもより引き締め感が高まり、弾力良く重心の低い安定感あるものになっている。音像の質感はより滑らかになり、密度も高まり、アナログライクな雰囲気が漂う。ボーカルの肉付き感もナチュラルで、しなやかな発音が耳当たり良い。オーケストラもS/N良く豊潤な響きに溢れ、くもりのない爽やかな余韻を味わえる。環境をより良くすることで柔軟に適合し、より良い表現力を見せつけてくれるT5p 2nd Generationのポテンシャルの高さを存分に感じることができた。
デュアル・モノ駆動とバランス駆動との違いについても述べてきたので、ここでティアック「UD-503」を用いたバランス駆動でのサウンドについても触れておきたい。
バランス駆動の場合においても音場の透明感、S/Nの良さはシングルエンド接続時に比べて向上する。さらに抑揚も丁寧になり、ボーカルなどの音像の質感も艶ハリ感を自然に表現し、息遣いのリアルさもきちんと拾い上げ、立体的に表現。リズム隊の引き締めも高く、ストリングスやギターなどの細やかなニュアンスも一つ一つ丁寧に描き切る。しなやかかつ滑らかな描写を味わえるが、デュアル・モノ駆動に比べてその変化が分かりやすく、朗らかで伸び良い有機的な傾向もより良く感じやすいようだ。
最後にポータブル機(Astell&Kern「AK380」+アンプユニット)のバランス駆動でのサウンドも確認してみた。11.2MHz音源では重心の下がったフォーカス良い音像が分離良く目前に浮き上がり、ボディの厚みも極めて自然に描写。非常に立体的で音離れの良い演奏を味わえた。楽器の演奏ノイズさえも邪魔にならない程度の微弱なタッチで感じ取れるほどS/Nが高く、ポータブル環境でここまで表現力の高いサウンドが味わえるようになったかと、感慨深かった。
進化したテスラテクノロジーを積むT1/T5p 2nd Generationという、双璧をなすフラッグシップ機が大きく飛躍した。こうなると下位グレードのモデルが今後どのような進化を遂げてゆくのも楽しみである。先行してテスラ2.0ドライバーを実装した「DT1770PRO」の好例も踏まえ、次なるbeyerdynamicの一手からも目が離せそうにない。
■試聴音源
【クラシック】
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(e-onkyo:96kHz/24bit)
【ジャズ】
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
【ロック】
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
【DSD音源】
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身によるDSD録音:2.8MHz)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(5.6MHzに変換)