[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第147回】アイアン・メイデンとは、正義。 “メイデンヘッドホン” でメタルの名曲を聴きまくる!
▼Porcupine Tree「Deadwing」
2005年発売「Deadwing」に収録:現代プログレ界隈ではエンジニアやプロデューサーといった立場での重要人物でもある、スティーヴン・ウィルソン氏のバンド。ウィルソン氏は、例えばキング・クリムゾンやジェスロ・タルといったバンドのリマスタリングで知られていたりする人物だ。そしてドラムスのギャヴィン・ハリスン氏も、前日のキング・クリムゾン来日公演でのトリプルドラムスの一角を担っていた人物だったりする。あと「ポーキュパイン・トゥリー」って言葉の響きの、声に出して読みたくなる感ハンパない。
そんなバンドの曲だが、この曲に限って言えば、いわゆる「プログレッシブメタル」の定型に比較的に沿ったスタイルだ。メタル好きのリスナーにも普通に好んでもらえるのではないかと思う。曲の長さもコンパクトに10分弱にまとまってるし。
<聴きどころ:03分01秒〜03分57秒>
いかにもプログレメタル的な展開を見せる中間部。ディストーションギターを中心としたリズムの決めから、ややクリーンなサウンドを背景にギターソロ、そして浮遊感のあるボーカルパート。ここではギターソロの音色に特に注目。フランク・ザッパ氏のようにミッドからハイミッドをブーストしたサウンドだ。一息を長くせず、句読点を入れて細かく区切っていくフレージングにもザッパ感があるかもしれない。
エレクトリックギターというのは、音域というよりも音色的に、中高域に集中した楽器。この曲この箇所の音色は特にそうだ。そのミッドのぎゅうっとした圧縮感、ジューシーさを、メイデンホンは存分に再現してくれる。「メイデンホンは中域のクリアさ重視」というのは確かにそう感じさせる曲も多いが、この曲この音色で中域の密度が不足する感じもしない。そのあたりのバランス感覚もさすがスティーブ・ハリス氏というべきか。
▼Dream Theater「A Change Of Seasons」
1995年発売「A Change of Seasons」に収録:現在の「プログレッシブメタル」を確立したオリジネーターと言えるバンドのひとつによる名曲だ。東山奈央さんとは関係ないが、その表現力の幅広さは共通するかもしれない。
ギターは7弦だしベースは6弦だし、ドラムスは要塞だしシンセもいるし、展開は複雑。とにかく様々な要素を、というかメタル的な要素のおおよそをカバーするような大曲だ。これを最初から最後まで問題なく再生できるオーディオなら、まあたいていのメタルサウンドに対応できるだろう。
<聴きどころ:00分00秒〜23分09秒>
全編を通しての幅広い音色や表現への対応がチェックポイントなので、時間指定としてもこんな感じに「最初から最後まで」となってしまう。
しかし今回ピックアップした他の曲とは被らないポイントで特に挙げるなら、実はド頭00分00秒のギターのアルペジオかもしれない。何本かのギターが重ねて録音されているし、単純にアコギや普通のエレクトリックのクリーンだけでなくエレアコやエレクトリックのピエゾの音も混ざってたりしそうだし、これが何ギターの音かは言い切れないが、とにかく印象的なクリーントーンだ。ゲージの太めの弦をしっかりピッキングしたような、アルデンテ的な芯や張り。そんな感触をメイデンホンはしっかり伝えてくれる。
この「音の張り」というのは他の曲でも例えばベースの弾力やドラムスのアタック感で発揮されており、メイデンホンの強みと言えるだろう。そこのところをギターでも確認できる曲だ。
次ページラストはお待ちかね、Iron Maiden!…と、ぴょんぴょん!